お忍び座談(壱)-2


その後は、ニコニコ上機嫌な弁丸を真ん中に挟み、三人でのんびり屋敷に向かった。


「才蔵は、想像していたのと違ったな」
「そう…ですか」

佐助に負けたことだろうかと、才蔵は緊張するが、

「けもののように言われておったが、見事なかんばせをしておる。化けるのは、さぞ達者であろうな」
「っ…」

無邪気な笑みに胸を握られ、喉が塞がれる才蔵。確かに彼の顔は、これぞ端正・男前・好青年代表と言えるものだった。見えても困るが、忍には全然見えない。

「大した苦労してねぇんだろ、どうせ」

さっきからずっと不機嫌な佐助が、すねた口調で言う。本人は冷めた風にしているつもりらしく、才蔵はそんな奴に負けたのを自省させられた。

「こういう奴ほど、破廉恥なんだぜ」
「なっ…そうなのか、才蔵!?」
「そ、そのようなことは決して!おい、ふざけるなッ」
「じゃあ女に興味ないって噂、やっぱマジなの?やめてよ、ウチの若に手ぇ出すのは」

「才蔵も、おなごが苦手なのか?」
「いえッ大好きです!!」

思いきりの良さに、弁丸も「…そ、そうか」と頷くしかない。才蔵への見方は少し変わってしまったが、彼の方は『破廉恥を嫌がる…清楚だ』と、またドキドキときめいていた。

佐助が才蔵を勧誘したのは、弁丸の父親からも『いずれ弁丸の力となる勇士を集めて欲しい』と、達しを受けたかららしい。
屋敷前に着き、佐助は一足先に駆けていった弁丸を見送ると、

「弁丸様が戦に出るようになりゃ、俺様の命はいくつあっても足りない。代わりの影は、いくらでも必要だ」

「お前…」

主の背を見つめる佐助の横顔は、ハッとするほど真剣だった。弁丸への忠誠は確かなのだなと、かなり見直したが、

「だから、『俺様が死なねぇように』アンタみてぇな奴らがね!よろしく頼むぜ、師匠?」
「──あ゙っ?」

そっちの意味かとすぐに撤回し、『師匠?』と怪訝に思うと、

「師匠〜!」
「よう来て下さった、霧隠の!」
「早速指導頼むぜ、才蔵」
「…は?」

屋敷からぞろぞろ出てきた男たちに囲まれ、首を傾げる才蔵。才蔵と同年ほどから十は上に見える者まで数人。既に弁丸の家臣となった、『勇士』候補なのだという。

自分が一番ではなかったことに、軽くヘコんだ才蔵だが、

「俺様が探す前に若に懐いたり、若が勝手に拾って来たりしてさ。皆、忍の術も会得したいって、言って聞かねぇから」
「はぁっ?」
「いやーほんと助かるわ〜。アンタやっぱ強いし、その性格教育役にぴったり。俺様が教えても良いんだけど、暇がないんだよね、弁丸様についてると」

挨拶が済んだら連絡してくれと言い、佐助は悠々その場から消えた。


「……」

才蔵は、ぐるりと周りに目を走らせると、

「既に異能をお持ちだろうに、なにゆえ忍の術を欲する…?」

「そりゃあ、決まってる」
「ここに来たからには、なぁ」

口を揃えての簡潔な答え、『弁丸様が、忍贔屓だから』に不覚にも喜悦と仲間意識を覚え、佐助の助力となってしまった才蔵だった。













時は、数年後に移り──

屋敷外の草屋に集まり、とある談義をするつもりだった勇士たちだが、『弁丸様(今は幸村)との出会い』に、話が脱線してしまっていた。※佐助(隊長)は不在

◇捏造勇士・しつこく少しおさらい

▼性格[得意物]
真面目・堅物系‥才蔵・伊三(弟)
穏やか・大らか系‥鎌之助・清海(兄)
生意気・ドライ‥小助
軟派・お茶目‥十蔵[銃]

頭脳派器用系(ヤンチャ)‥甚八[策・術]
〃(優雅)‥海野[薬・香]
〃(+体育会系)‥望月[爆弾・武器]

まとめ役‥才・三好兄弟
悪戯好き仲良し‥十・甚
工作好き大人子供組‥甚・海・望

▼外見イメージ

高身長マッチョ系‥兄弟・十・望
スラッと系‥鎌・才・甚・海
銀髪‥鎌、茶髪‥小、他は黒他・自由設定







甚「──そーそ、長が弁丸様の添い寝したと知ったときの才蔵、ありゃひどかったよなぁ」
十「『孕ませる気か!』ってなー。下手な冗談だと思ってたら、本気だったんだもんねぇ」
小「そんなんだから、隊長の座逃すんですよ。わざわざ自分から蒸し返すし」

才「……」

ケラケラ笑ったり呆れたりの三人に、「『包み隠さず話す』の約に従ったまでだ」と、才蔵が仏頂面で応えると、

清「まぁ、そう言ってやるな。この実直さのお陰で、我らの評価も高くあるのだ」
伊「そうだぞ、お前たちこそ少しは見習え」
十「ムリムリ、忍術習うより無理〜」
甚「隊長殿からしてふざけてるんだ、部下もついてけるようじゃねぇとさ」

海「…ところで、才蔵が敗れる直前に、長が手にしたものとは?」
望「あ、俺もそれ気になってたっす。その効力、武器に仕込めねぇかなぁ」

才「師から授かった秘伝らしいが……誰が尋ねても、決して明かさぬからな」
小「盗るしかないですね。入手して武器作ったら俺に下さい、望月さん」
望「おぉ、珍しいな?」
小「過去最強に仕上げて下さいよ、試し撃ちは長にするんで」

全『………』

場は一瞬静まり返るが、小助は真顔で、

「長の切り札なんだから、本人の身でないと威力量れないでしょう」

「…まま、その話はまた後でな!」
「そそ!さっ、次は誰の番だっけ?」

──甚八らが小助の意識をそらし、話は元の議題(弁丸との出会い)に戻った。


それぞれの簡略履歴と出会い

(↑短・説明文。三好兄弟・甚・海・望の)


伊「…才蔵の、長との手合わせに比べると、陳腐な経緯(いきさつ)ばかりだな…」
十「ほーんと、味気ないのばっか」
望「そう言う十蔵は、どうだったんだ?」
十「ふっ…俺のは、そりゃあ劇的でねぇ…」

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