お忍び座談(壱)-1
氷垣様、ありがとうございました♪
素敵リク「十勇士→幸(or弁)/雰囲気おまかせ/可能なら破廉恥」
※十勇士デタラメ捏造、薄くて幼稚な設定・キャラ。管理人の知識=二次作品・ネット辞書。すみません…。※
長文・散文
【前編】予定妄想・皆で座談+破廉恥的が入らなかったので、後編で書きたい所存。
勇士と弁丸/佐助の出会い話(主に3〜4勇士)、間々に勇士らの座談(会話のみ)。微ギャグほのぼの・シリアスなど。弁丸子供らしくない(;∀;) 幸村も少し登場。
佐vs才は、無知識の自分でもそのイメージがあったもので、つい;
※都合により、2頁目にリンク子頁あり
(全5ページ)
永続的な主を持たない若忍、霧隠才蔵。以前の契約が終わり、前から気になっていたことを己の目で確かめようと、この町へやって来た。
こちらの領主である真田家は、給料の面では他より下回る割に、忍の数が多い。それが昔から不思議で、最近ではまた気になる噂を耳にした。そこの次男はまだ元服前だというのに、多勢の忍を従えている、父親の采配ではなく、忍らが望んで忠誠を誓うのだとか。
その理由への憶測を同業の情報通から聞き、『馬鹿馬鹿しい』と、若干嘲笑気味に覗きに来たわけだ。
「そっちから出向いてくれるなんてねぇ」
「…お前は」
人影のない場所に現れた、任務で何度かすれ違った仲の真田の忍。猿飛佐助、その名は才蔵に負けず、忍界の若手奇才として有名だった。
「簡潔に言う、今から俺様と勝負しな。俺様が勝ったら、アンタは真田と永久契約する」
「何?」
「どこ行っても自分より劣る奴ばっかで、退屈なんだろ?それはな、単にアンタよりデキる忍が、全員うちに寝返っちゃったからなんだぜ」
佐助は不敵に笑い、「その下っ端の俺様に負けりゃ、嫌でもそうしたくなるよなぁ…?」
「…見た目に違わぬ浮薄さだな。貴様と名を並べられるのは、これきりにさせてもらう」
「そっちも見た目通りの奴だねぇ。柔軟性は必須でしょーが、この仕事にゃ」
戦いの火蓋は落とされ、二つの影が木々を飛び、葉を散らしながら術や技が飛び交う。
──数刻が過ぎた後、優勢にあるのは才蔵の方だった。
「力も、見た目通りだったか」
「…っは、ここからが本番だよ」
上がった息を整え、佐助は懐に手を入れた。才蔵は身構えるが、
(何だ…!?)
手の中のものを確認した佐助の、闘気が上がっていく。尋常でない速さと量に気をとられていると、佐助が消えた。
「佐助ぇー!」
「若、お待たせ〜」
他の忍に抱えられ、上空から降りてくる子供。佐助が仕える真田の次男坊、弁丸(十歳)だ。
(あれが、真田の…?)
地に倒れた才蔵からは、陽の光が邪魔で見えない。膝を着き身を起こすと、タタッと足音が寄り、
「おぬしが、佐助より強いという…」
「いや、俺様勝ったってば。若、ほら」
「う、うむ。『どうだ、佐助は強いだろう。それを従わせておるそれがしは、言うまでもない。ゆえに…』」
「(あ…)」
光が佐助の背に隠れ、弁丸の顔がはっきり見えた。その表情は、少し困ったようなそれで、
『噂だとは思うがね、兄君の首影として使えるように、「男として育てられた姫君」だとかも言われてるよ。そんで、妙に人気があるとか何とか…』
(──噂は、まことだったのか…!)
才蔵は目を見張り、弁丸の姿を仰ぐ。男児の身なりをしてはいるが、顔は変えられない。姫の髪型ではなくとも、その愛らしさは隠せておらず、
急にまた息が上がり始め、才蔵の頭に警鐘が鳴り響く。…これはまずい、未経験だが、胸に広がるこの生温いものはアレの前兆、一生落ちるはずのない穴だと思っていたのに、しかもまさかこんな変わり種に、
「『それがしの家来に…』…」
「若?」
用意されたのだろう誘い文句を止めた弁丸に、佐助も才蔵も戸惑うが、
「…ご覧の通り、佐助はとても強うござる。だが、それがしはまだまだで、佐助を従えるに値せぬ未熟者だ。…いいやもっと悪く、日々世話をかけておるばかりで」
予定と違う話、表情を落とす主に佐助は絶句するが、弁丸は即座に眉根をきりっと上げ、
「しかし、父上を越えるつわものになり、武田を支える一石に必ずなる。石が岩に、山になるにはそれがしの力だけでは叶わぬゆえに、おぬしのような者が欲しい。兵も忍もいたずらに失わずに済む、どこよりも強い山に…!」
「──…このような自分で、良ければ」
「えっ!」
弁丸は目を丸くするが、その顔を向けられた佐助は、苦笑いを浮かべるだけだった。やっぱりね、とでも言うかのように。
才蔵は、弁丸の前に膝を着き直し、
「自ら仕えたいと思ったのは、此度が初めてです。…弁丸様と、お呼びしても?」
「あっ……う、うむ!あり…感謝するぞ、才蔵!」
「は、滅相もございませぬ」
喜びに満ちた顔と声に、こうべを垂れる才蔵の胸が高鳴った。
(まだ幼いが、既に己の道を見据えて…)
おなごであるのに、そんなひ弱さは微塵とも感じさせない。一体、どれほどの壁を乗り越えて来られたのだろう、そしてこれから、どれだけ辛い目に遭うことか。なのに、本人が一に思っているのは、自分ではなく周りの…それが、人気の理由だったのだ。
くっと嗚咽を噛み殺し、光に向かうような目で弁丸を見上げる。──首影になぞ、決してさせるものか。
「この才蔵、命を賭して弁丸様をお守り致します!」
(あなたが姫に戻られる日を、必ずやこの手で…!)
こうして、弁丸に頼もしい味方がまた一人増え、彼の変声期まで才蔵の勘違いは続いた……が、忠誠は変わらなかったという。
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