夢結び(後)-1


さぎの様、ありがとうございました♪

素敵ネタ「年齢逆転(年上幸・年下佐)/できたら戦国/片方がトリップでももしもの話でも…他」

【後編】佐幸。佐助が主、モブ・弁丸も少し。ほのぼの微甘・微ギャグ、※シリアス・切なめ

佐幸OK頂きました^^ 前半は佐・幸ほのぼの〜で、後半から違う雰囲気(佐・モブ…) こんな展開・しかも分かりにくくてすみません(><) でもバッドエンドのつもりではないです。

会話三昧・長いんで、お時間のある際にどうぞです(汗) 説明不足箇所は、後書きで補足


(全4ページ)













「ぅ…」
「…おはよう」

「──!」

佐助が声をかけると、幸村の目蓋はパッと上がり、

「夢ではなかったのだな!」

またけたたましく顔を洗い、佐助の前に背を向け座った。

「いつもやっておろう?」
「……はい」

櫛と紐を笑顔で渡され、佐助に拒否の余地はなかった。弁丸と、昨日の幸村と同じ笑みなのだが、今朝は違って見える。昨晩の夢がよぎり、佐助は髪結いに集中した。

昔は身の丈に合った長さで、柔らかく量も軽かった。幸村の髪も柔らかだが、弁丸のより長くしっとりしていて、触り心地の良さが上がっている。これに、こちらの自分は毎朝触れているのか…朝だけでなく、夜も


「…終わっ、たよ」
「うむ!やはり、佐助にしてもらうのが良いな」
「え?やってんじゃないの?」
「この歳になると、頼み辛うてのぅ…」

幸村はバツが悪そうにするが、佐助は『…勝った』と思え、緊張も和らいできた。

朝餉を用意してないと佐助が謝ると、「だから気を遣うな」と幸村は笑い、近くの川辺へ招いた。
浅瀬に下げられた籠の中に、瓜や胡瓜、果物などがあり、よく冷やされていた。夏に館で過ごす際は、こうして二人で食べているのだという。

「『旦那』…」
「…え、」

「俺様、名で呼ばないんでしょ?…違うのが良い?」
「い…良いッ。それで!」

幸村は頬を紅潮させ、「やはり、佐助だ…」と小声で呟く。無論、佐助には筒抜けだったが。
ということは、あれもやはり真実の予告なのだろう。『旦那』という呼び方は、夢の中で得た情報だった。

「…もしかしてさぁ、ほとんど、あそこで二人で暮らしてるとか?」
「いや…大抵は屋敷の方だがな。佐助は、常に傍におるゆえ」
「は……そう、なんだ。…戦もねぇのに」

その意味を、幸村はすぐ察したらしく、

「他に行くあてのある忍は放したが、それでも良いと、いくらかは残ってくれておるぞ。大した報酬はやれておらんが」

いずれは、穏やかな余生を送れる環境を用意してやりたい、と言う。…それは、相当な人数が残っているに違いない。

「──で、嫁さんは?旦那の」
「ん゙!?」
「だって、まだ独りってさ…後継ぎどうすんの?これから?」
「っ、れは、」

幸村は、詰まらせたのを水で流し込むと、

「あ、兄上に、立派な子がおるゆえ」
「いや、でもさ…」
「…というより、お前が」
「……俺様、が?」

幸村はそこで黙ったが、佐助の胸は充分満たされていた。…十余年先の自分の、何と幸せなことか。平穏な日々を二人で過ごせているだけでなく、彼の心をこうまで独占出来ている。

夢のようだ。本当に。



「…実はな」
「ん?」

「昨日お前を見たとき、俺の子にならぬか、誘おうかと」
「……はぁー…!?」

佐助は仰天、呆れた顔で返すが、

「佐助に似ておるし、他人と思えなくてな。つい」
「ちょっとぉー…」

というと何か、幸村と佐助が親で、自分が二人の子?とんでもない図に、ぞぞぞと寒気が走る。『他人と…』という言葉は、まぁ嬉しかったが…

幸村は面目なさそうに、また恥ずかしそうに謝り、

「危うく、お前を帰さぬところであった。…俺も弁丸も、お前がおらねばならぬというに」


(…そうだよ)


弁丸の、一人で泣く姿が浮かび、佐助の拳がキュッと固まる。


あの人には、俺様がいなきゃ













川辺から戻ると、幸村は『早めに戻るゆえ』と、真田の屋敷へ馬で駆けていった。

佐助も隠れてついて行くと言ったが、昔日の戦の片鱗を見聞きするかも知れぬと、幸村が許さなかった。それだけでなく、あちらには、今の佐助に優る忍が何人もいるので、万が一見つかれば、


『その分、お前とゆっくり過ごす時が損なわれる…』

その言葉で、佐助は大人しく待つことに決めた。

が、元々清潔な館の掃除はすぐに終わり、薪割りなどをしてみても、日はまだ高い。普段は一日用事があるせいか、部屋で座っていても落ち着かない。また、昨晩見た夢のせいで、『ここで、あの二人はあんな夜を…』とばかりが頭に浮かび、どの場所にいてもそわそわしてしまう。


(…すぐ戻れば良いんだし)


よし、と佐助は気持ちを入れ換え、山を降りてみることにした。城下町を上から見るくらいなら、許されるだろう。










(……戻るか)


山のふもと近くの樹の上で、佐助は溜め息をついた。空は、既に夕焼け色に染まっている。踵を返し、館の方へ跳んだ。

これも『夢』の力なのだろう、行けども行けども、佐助は山から降りられなかったのだ。結局城下町には近付けなかったが、変わらず賑わっているように見えた。…それなら良いかと、佐助も折り合いをつけた。


(旦那、まだ戻らねぇんだ……)


縁側に腰を下ろし、陰り始めた外を眺める。夕餉を準備したくとも、幸村が屋敷から調達すると言い張っていたので、やはりすることがない。少量持っていた武器磨きも、これ以上やれば形がなくなってしまいそうだ。

と、馬の駆ける音が遠くに聞こえ、佐助の目に生気が宿る。外に出て、館の前に立つと、

「……ッ、佐助ぇ!!」
「ぅぇぇえ!?」

佐助の姿を見るなり、幸村は馬から飛び降り、ぐわっと腕を回してきた。

「いてててて!何っ?死ぬ!」
「…はっ、す、すまん!」

幸村は慌てて離すと、「良かった…!お前の姿がなかったゆえ、人さらいにでも遭ったかと!」


「……」

佐助は、「あのねぇ…」とこぼし、

「俺様は、弁丸様みたいな幼子じゃねぇっての。旦那、俺様のことナメ過ぎ」

「っう、…いや、そのようになど…」

幸村は詰まり、「慣れぬ世であるし、何ぞあるやもと…」と、モソモソ言い訳に走る。

どこまで探し回ったのか、馬はへばっており、幸村の身なりも乱れきっていた。

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