夢結び(前)-1


さぎの様、ありがとうございました♪

素敵ネタ「年齢逆転(年上幸・年下佐)/できたら戦国/片方がトリップでも、もしもの話でも…他」

【前編】佐+幸(佐幸寄り)。佐助が主、弁丸も少し。14歳×2?歳(設定なし) ほのぼの・微々甘・静テンション

さぎの様すみません、勝手に佐幸だと思い込んでました(><) 前触れもなく片方をトリップさせ、明るく〜するつもりが…;

年齢逆転より、トリップ(なのかも怪しい)ネタが強いような、背景は一応戦国でファンタジー。無理・おかしいとこはファンタジーで納得してね。
長くなりすみません。やり取り・会話多し


(全3ページ)













西の空に陽が傾き始めた頃、佐助は緑深い山中を跳んでいた。外での仕事を終え、遊びに出たらしい幼い主(他の従者が付いてはいる)を、迎えに来たのだ。…が、

いつもの場所に彼の姿はなく、佐助は無数のツタで出来た小山の、その中心に空いた洞をひょいと覗いた。中を通ったことはないが、小さく円い光は向こうへの出口で、あちら側にも似た林があるだけなのは、以前に別口から確認済みだ。

しかし、自然物にしては珍しい形のせいか、山里の子供らの間では『こだまの道』などと呼ばれ、言い伝えが囁かれていた。向こう側は木霊たちの遊び場で、こちらから呼びかけると人の声を真似て返したり、あちらへ招いたりしてくるのだと。


『むこうに行くと、ゆめのようなもてなしをされるそうだぞ』
『へー、そりゃ良いねぇ』
『…だがな、行ったものはこちらにもどれず、こだまになってしまうのだ。だから、みなあれにちかづかぬ』

『ぷっ…』
『ッ!?さすけ、しんじておらぬな!?』
『──いや、だってさ…』

ご立腹の主に、佐助は苦笑しながら、

『戻って来られないんなら、こっちの人に、誰もそれを話せないと思うんだけど?』

『……あ』

主は歳より幼く純粋なのだが、そういう頭は優れているので、素直に納得していた。彼の得になる夢物語には付き合うが、そうでない眉唾物は早めに忘れさせる方が良い。

最近そんな話をしたので、自身でも確かめるため、向こう側へ行ってみたのではないだろうか?と、佐助は洞に向かい、

「弁丸様ー?俺様参上しましたよー!」

向こうにも充分届く声で、呼んだ。すると、


『…け……さ…すけ………』


(……やっぱな)


だが、何も返らなかった場合への懸念は消えた。似た場所でも子供には新鮮で、すぐには離れがたいのだろうと察し、

「俺様がそっち行くから、まだいて良いよ!」

佐助は、洞の入口に足を踏み入れた。










「……っつ」

反対側に出た途端、まばゆい光に目を刺され、佐助は目眩を起こした。

突如のそれらに戸惑ったが、目を開ければただちに頭からなくなる。
──弁丸の姿が、見えない。従者が、先に連れ帰ったのだろうか?

目が慣れてくると、佐助の顔は険しく変わった。…何故か早くも日没前の空になっており、木々や草の様相がまるで違っているのだ。
彼は、急いで大樹の上まで跳ぶと、


(場所は同じ……当然か)


小さくだが望める城下町や景色が、それを明示していた。ひとまず息をつき下に降り、人が使う山道の方へと向かう。

弁丸の名を呼び探すも、彼と従者の気配は一切感じられない。やはり先に帰ったのだろうと、佐助は後ろを振り返った。が、何故そうしたのか自身に戸惑い、──そして、胸に緊張が走った。


(……俺、どの道でここに来た?…どこで、弁丸様の声を聞いた…?)


…いや、そもそもあれは、彼の声だっただろうか?よくよく思い返してみると、全く違うものだったような…
そんな馬鹿なと動悸が速くなり、自然歩みも早まる。終いには駆けるように進むと、突然目の前に、小振りの館が現れた。──昨日までは、そこに存在しなかったそれが。

佐助は唖然とした後、『…ああ、夢を見ていたのか』そう思い至る他なかった。


「もう戻ったのか、…ッ?」


(しまっ…)


縁側の障子が開く前に動けず、佐助はその館の者と対面してしまった。














「弁丸様!?」
「ッ…!」

「──は、失礼を…っ」

佐助は、己の言葉に愕然とした。出てきた相手は、年の頃二十そこらの若武者だったというのに。
…しかし、髪と瞳の色が彼と同じで、顔も似ている……

それはともかくも、佐助は急ぎ頭を下げると、

「道を誤ってしまい、申し訳ございません」
「っあ、良いのだ!待て、待ってくれ!」
「へっ…」

去ろうとするのを必死で引き留められ、佐助は面食らった。怪しい者だと問い詰めてくるのではなく、その彼は、子供のように目を輝かせ、

「そなたの主、弁丸というのか!?己の昔の名も、同じであったのだ!」

「え…」
「この辺りでは見かけぬ顔だが…名は何という?」

当然偽るのが基本だろうに、佐助は、また自分に戦きながら、

「さ…、佐助……と」

「──そうか!」

目の輝きを増すと、彼は嬉しそうに笑み、

「某は、『真田』源二郎幸村と申す。皆幸村の名で呼ぶゆえ、そなたも…」

「………」

顔には出さずとも、佐助は驚いていた。弁丸と縁ある者なのだとしたら、似ているのもいくらか頷ける…が、耳にしたことのない名に、戸惑いは消えない。

幸村は佐助の警戒も気にせず、縁側に座るよう促してくる。文字通り消え去るのは簡単だが、疑問を残したままでは、佐助もそうできなかった。


「しばし、話し相手を務めてくれぬか?連れが出ておるゆえ、退屈でな」

「あ、奥方様が…」
「!?い、いや!そうではない!」

幸村は赤い顔で否定すると、相手は従者なのだと説明した。仕事で他国へ渡り、数日は戻らないらしい。

「それも『佐助』というのだ。猿飛佐助、良い名であろう?歳は違うが…あ、そなたいくつになる?」

「──…十四です」
「はは、そうか…こちらの佐助の、一半にも満たぬな」

「……あ、あなた様の、」

先の言葉のせいで、佐助はまた目が眩んできたのを感じながら、

「御年は…、…それと、今はいつの年ですっけ……?」

「ん?※※※年、某は、二十と※つの歳になるが」


(………)


嘘をついているとは思えない顔に、佐助は状況を理解した。普通なら信じず外へ確かめに行くだろうに、何故か無駄だと悟った。その根拠は分からないが。

同じ場所でも異なる景観、初めて聞いた年号、自分より遥かに歳上の、主に似た彼──…

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