落ちたが最後4



三成は、幸村に向かうと、

「まず、私とそうなれば、貴様の享楽は皆無となる」
「はい?(キョウ…?)」

「退屈よりも苦痛な時間を強いるだろうが、裏切りは決して許されない。無論貴様がどんなに拒否しようが、二度と離しはしない。一生な」

「は…」
「「ちょちょちょちょ!!」」

政宗と佐助は、見事にカブると、

「何その劣悪条件!?どーゆーことなの!?」
「てめぇ、幸村に惚れてんじゃねーのかよ!?」

「…勝手に奪われたに過ぎん。よって、貴様らとは違う」


「……って…」

佐助も政宗も、幸村も目を丸くするが。

三成は、三人を見比べると、


「…そんな男に一生縛られるのと、今は辛くとも、確実に貴様らしくいられる先への選択をするのは、どちらが百倍もマシだ?私は、」


(どちらの貴様も…)


彼らといるときの幸村は、本当に目が離せなかった。それぞれの気持ちや必然性も、今ならよく分かる。──ゆえに…








「アンタ…」

政宗と佐助は神妙な顔付きで、掛ける言葉に詰まる。

そして、幸村は。


「つまり……『某らしく』というのは、石田殿と、こっ、恋仲に、ならぬ、ことと…」

噛み砕くように、一つ一つ呟くと、

「……一つ、お尋ねしても?」
「…何だ」

「某と、恋仲…になった場合、石田殿も苦痛なのですかな…」
「…何だと?貴様は馬鹿か、何故ッ」
「某も同じでござる!」

はっ?

突然声を張る彼に、ポカンとする他の三人。に対し、幸村は何故か赤面が進行しており、


「『某らしさ』や『某の享楽』は、某自身が決めることにてっ……おっ──お慕いしておりまする、石田三成殿!!」





「……Pardon?」
「…エ、なに今の?」

呆けた顔でツッコむ二人だが、幸村は三成だけに一点集中、

「某は入学式の際から、石田殿に『奪われ』ておりました。…先日の贅沢バーガーは、悪印象だと分かりながら、どうしても名を覚えて頂きたくて…」

「………」

三成は、無表情のまま硬直している。


「想いを伝えようと決めたものの、常にすくんでしまい…せっかく、二人も応援してくれたというのに」


(──…何ッ!?)

噛み合わない一言に、カッと目が開いた三成だが、


「ちょっと待って……」

「幸村、お前が惚れた奴って…」


「「こいつだったの/か!?」」

はぁあああ!?と、佐助と政宗は悲痛な叫びを上げ、

「徳川のダンナじゃなかったわけぇぇぇ!?」
「どいつでも胸クソ悪いってのに、何でテメーみてーな奴が!」

「なッ…」

家康の名と政宗の態度にプチッといきそうだったが、三成はこらえた。
…ということは、学校で聞いたのは、別の者の話題だったのか。……つまり、

幸村の言葉は、死を覚悟した『ドッキリ』でなければ、真実・現実というわけで、


「……だが、貴様がいかな楽観主義者でも、やはり…」

「し、心配無用にござる!某、空手はまだ初心者ですが、剣道の経験もありまする!石田殿の愛読書もかなり読み込みました、しばらくは退屈させずに済むかと…っ」


「そう……か」

とシンプルに応える三成だが、内側では真逆である。監視中に見た道場や図書館での様子が浮かび、初めての出会いで受けたアレにも勝る高圧電流が、胸を破壊した。


「これからは、お側でもっと学ばせて下され。…す、末永く…」

「ふん。……私の台詞だろう」


顔と台詞が合っていなかったが、幸村には効き目絶大だ。ポッと湯気を上らせる彼に、三成の青白い頬もわずかに変化する。

そんなこんなで、並んでみると意外にお似合いで、恐らくタイプ(一目惚れ・思い込みやすさ・不器用さ)もよく似た二人は、やっとこさ成就できたのだった。









「旦那のためなら、別に良いけどさ…」
「しかし嫌な野郎だな、幸村がコクる前に断りに来たくせによ」

「いや…」

三成は誤解を解こうとしたが、止まり、

「『押し付けるな』以降の言葉は撤回、…謝罪する」


「「…はぁ」」

返答とも溜め息とも取れる声で、涙を飲む二人。──(先輩でも)家康ならば、好きなだけシバいてやれただろうに。(←怖くないので)

「旦那、幸せになるんだよ…(グスッ…)」
「俺たちは、ずっと味方だからな」(だばばばばー)

「はい…っ」

全然飲めてないものを垂れ流す彼らに、幸村も感涙する。ただ彼のは嬉し涙で、二人はさらにオイオイと嘆いた。


(……ぅ…)

これには三成でも、自分が悪者であるかのような、何とも気まずい心地にさらされたのだった…。












‥おまけ‥


昼休み。できたてホヤホヤのカップル・三成と幸村は、校内の隠れスポットにて、バドミントンで愛のラリーを…


「そろそろ落とせ、貴様ァァ!!」
「Ha!そう簡単に幸村とやれると思うなよ!」
「っ……だいたい、何故貴様らと…ッ」

「Ah〜?お前が言ったんだろ、俺らもいて良いってよ。俺らといるときのアイツが、大好きなんだろーが?(ケケケ…)」

「…っ…ぐ…」

情けなどかけるのではなかったと、三成は盛大に後悔している。…だが……


「三成殿、頑張って下され〜!」

眩しい笑顔で手を振り、三成の勇姿にうっとりする姿は、二人きりでは見られない。

──これもまた幸福かと、幸村にフッと笑んでみせるのだっt「は〜い旦那、『あーん』♪♪」

↑和やかなラスト(予定)シーンに被さり、弁当のおかずを幸村に与えようとする、笑顔全開腹黒オカン。


「させるかァァ!(もぐもぐ!)」
「あっ」
「…おーお、必死」

幸村の口に入る前に三成が食い付き、佐助は笑いながら拍手。(ちなみに三成のラケットは、政宗の胸へ飛び込んでいった)

三成は、フンッとせせら笑い、

「不味い!こんなもので真田を釣ろうとは、貴様も」
「これ、旦那がアンタに作った弁当だけど?」

「(しゅん…)すみませぬ…もっと、精進してから…」


「猿 飛、き さ ま ァ゙ァ゙ぁ゙ぁ゙あ ……!!!」


……和やかな日々の訪れまでは、まだまだ長くかかりそうだ。









そして今度は、二人っきりの昼休み。


「…真田」
「はい?」
「お前は、私のどんな姿に、初めて『そう』思った?」

「え…!」

まさか、三成から『私のどこを好きになったの〜?』な、恋人らしい質問が出るとは。
幸村は赤面し、

「な、なにゆえっ?」

三成にからかわれた経験がないので、頭が回らない。
だが、三成はそんな彼の内情には気付かず、


「あの二人のせいで、入学式当時の私は失われた気がする…」


(私の強味は、真田を落としたその姿だというのに……)




「──どうした?」
「…っ、いえ…」

悩める彼の横顔を見ていた幸村は、サッと目をそらし、


(今は、そういうところもすごく……)



…幸村が頑張って、三成がまた落とされるまで、もう間もなく。







‐2013.7.22 up‐

お礼&あとがき

むら様、素敵なリクをありがとうございました^^ が、こんなものになって本当にすみません!せっかくのネタが…(><)

幸村が政・佐にああいうの言ったのは、片想いの件をそろそろ打ち明けようと思ってて、引かれて縁を切られたらもう伝えられないから、先にと。二人は幸を避けてたんじゃなく、コクるの邪魔せんため。噂話をしてたのは鶴・孫。Y=結城さなえさん・吉沢サナさんとかそんな名前(^^; おまけ三幸、刑・官が陰で見守りながら、政・佐を引き止めてた。刑部とっつぁんの名台詞は『カリオストロの〜』より。

ハイテンションやストーカーな三成、プリ佐・幸、あわあわ政・佐など書けて、楽しかったです。
こんなことですが、むら様、この度は本当にありがとうございました…!

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