落ちたが最後2




『それそれ、頑張れよhoney〜』
『あっ、もう!政宗殿、いじわるでござるぅ…!』
『悪ィ悪ィ、ちょこまか動くhoneyが、fairyみてーにcuteでよ。ついな』
『そっ、そんなのではごまかされませぬ…ッ』


↑三成には、こう見える。

まるで恋人同士ではないかと、地獄の鬼のような形相で木にかじりつく。
遊び終えた二人がベンチに座ってからも、『こいつぅ』『もぉ〜』みたいなやり取りに見え、三成の目は元のより尖っていった。


「政宗殿と会って、三年と少しですなぁ」
「Ah?何だよ急に」
「あ、いや…」

幸村は、おもはゆそうに、

「某、政宗殿と会ってから、毎日が充実しておりまする。もう、政宗殿なしの人生など、とても考えられませぬよ」


「……」

声を失う政宗に、幸村は照れ臭そうに笑い、

「いつか言いたかったのです。気にしないで下され」

「幸村ァァァァ!!」
「むぉっ?」

ガバッと政宗に抱き付かれ、キョトンと目を丸くする幸村。『にらめっこではないのに』と首を傾げたが、政宗は情熱的な眼差しで、

「俺も同じだぜ、my honey…」

「ま、政宗殿……まことで?」
「ああ…」

政宗は溜め息をつき、「…なーんて、騙されるかってんだ!」

「え」
「たった三年でも、俺の七転八起をナメんなよ!?どーせ『rivalとして』っつー意味だろ、分かってんよ、お前のことは嫌ってほどな!」

Hahahahahaと勝ち誇った顔で笑う政宗、しかしどう見ても強がりで、何とも切ない姿である。


「……」
「何だよ、そ…んな顔したってなァ、…まぁわざとじゃねぇのは分かってるが、ああいう過激な天然発言はだな…」

「…『ライバルで友人で』は、『どうせ』でござるか……?」


しゅん…

幸村は長い睫毛を伏せ、寂しそうな表情になっていた。それは、あの表情とは違えど、破壊力は同じほどに強く、

「バカ!(だと分かってても)嬉しかったから、抱き付いたんだろーが!…あッ」

自分の言葉に、『ゲッ』と政宗は後悔するが、


「政宗殿……」

「(……っぐ…)」


──そういう意味ではないと、分かっていても嬉しいし、分かっているのに、胸をくすぐられてしまう。
本当に、厄介なのに引っ掛かったもんだと、政宗は今回も討たれて沈む。

『お前が笑うならそれで』とか心の中では格好を付け、明るい笑顔になった幸村に、苦笑するしかない彼だった。








(あの、思わせ振りな言葉…行動、表情……)


『真田幸村、やはり貴様は害悪だ…!!』

せっかく治まっていた三成の怒りは、この時間で全て元に──よりも、悪化を遂げてしまったのである。













その日の放課後、三成は荒ぶる気持ちを抱えたまま、幸村の監視を再開した。

今日は部活が休みの幸村と、一緒に帰ることになったらしい佐助の後を、尾行する。


(あの男は、真田の幼馴染み……昔から、奴を知っているのか)


「……」

それがどうしたと、三成は顔に険を射す。自分の幼なじみの金吾を思い出し、『なら、問題ないだろう』と安堵し、

──安堵だと?何にだ!と、一人でキレたりしていた。


「弁当、いつもすまぬな」
「んー?俺様作るの、たった週二じゃん」
「しかし、いつもおかずを分けてもらっておる」

幸村の家は父子家庭で、彼は昔から、佐助の手料理の世話になっているのだ。

幸村は、佐助に微笑を向けると、

「佐助がおらねば、俺は生きてゆけぬな」


「…まーたまたぁ」

間が空いたが、佐助は苦笑し、

「俺様の料理とお菓子がないと、だろ。あんなのレシピ見りゃ誰でも作れるよ、別に俺様がいなくても」
「いや、それでは意味がない」

幸村は首を振り、「俺は、佐助が作ったのが良い。同じ味でも、お前がおらねばきっと旨くないし、つまらぬ」


「…つまらぬって。俺様、そんな面白い?」

と、佐助はまた苦笑した。

そんな彼を横目に、幸村は少し固い面持ちに変わると、

「佐助がおらねば、俺はこんな風に、己らしく生きておらんかった。学校へも、これほど楽しくは通えなかったろう」


「──…」

言葉を飲む佐助に、幸村は慌てて、

「ふっ…とな、言いたくなった!突然すまん」

と、笑ってごまかした。



「…良いよ」
「え?」

幸村が聞き返すと、佐助は微笑んでおり、

「謝んなくて。俺様も、いつか言おうと思ってたし。…同じこと」


「佐助…」



(くっ……)


二人の間に見える眩しい絆に、三成は顔を歪める。
佐助の落ち着きようと包容力に、政宗のときには全くなかった敗北感が湧いてきた。

──のだが、



「そーだ、久々にプリ○ラ撮らないっ?」


(!?)

佐助の、学校では見たことのないテンションへの急変に、愕然とする。

だが、幸村は動じておらず、「佐助は、本当に写真が好きだな」と、一緒にプリ○ラコーナーに入っていった。


「旦那、コレ着けてみて〜?」
「おぉっ、虎耳に爪!…どうだっ?」
「わーお、イケてるーぅ!で、俺様襲って?」
「こんな感じか?」
「うんうん、そうそう♪」

↑佐助の身体に、横から抱き付く図。※三成からは見えないが、だいたい予想つく。

「次は、エサの匂いを嗅ぐポーズね」
「えーと…こうか?」

↑佐助のほっぺにチュー寸前、にも見えるポーズ。佐助は、ベタ甘な超絶笑顔。


「うん、ばっちりー!えっへっへっ…旦那をいただきま〜す(ハート)、っとぉ」(カキカキ、ポチポチ)

「む?俺が佐助を食うのでは……あっ、ハート入れすぎだろう、お前いつも──」









(…羨ま……などあるかァァァ!!)


三成は胸中で咆哮し、

あれもこれもそれも、全て奴のせい!ライバルとでも幼馴染みとでも、存分にやれば良い、そしていつか、泥沼三角関係に困り果てれば良いのだッ!

──これ以上知るのはもう願い下げだと、そこから走り去るのだった。

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