吐露6













――旦那、泣いてる。



…俺様のせいなんだけど。



くすぐったがりの旦那は、大変だよね。
――どこもかしこも弱くって。

この殺人的なまでの色気は…



あいつに見せたくないな。





というより、誰にも見せたくないよ。



(…もう、お別れなのに)









急に幸村の声がしなくなったので、ふと顔を上げて見ると、

「ちょっ……!」

慌てて身体を起こす。

幸村の口からは血が滲み、よっぽどの力で唇を噛み締めていたということが窺えた。
――恐らく、声をもらさぬように。

「血が…」

つい悲痛な声を出してしまい、佐助はその傷を舐めた。――血の味が口の中に広がる。

「っつ」

幸村の顔が歪む。

「……」

佐助は一旦離れ、今度は唇だけをそこに触れさせた。
そっと、優しく。…口付けのように。

血が止まったのを確認し、ゆっくり起き上がった。

「…止まってくれたな」

幸村が、ポツリと呟く。

「血?――うん」

佐助が、その唇を指で撫でた。
幸い、大した傷になっていない。

「違う――お前が」

と、幸村は上体を起こした。
その肌には、紅が散らばっており――佐助は、目をそむける。

(自分でやったくせに…)

先刻までの雰囲気は、すっかりなくなっていた。

「だからさ、俺様は教えてやるつもりで――」

性懲りもなく冗談混じりに言おうとするが、幸村の目がそれを遮った。

「…こんなことをせずとも良かったのだ」

着物を直し、佐助に向き合う。

「佐助が…無理をしてすることはなかった」

その瞳は、ただただ悲しい。


「…旦那」


(無理…なんかじゃ)


しかし、ここでもその言葉は詰まって出てこない。


「――お前が心配せずとも、俺の…想う人への気持ちを断ち切らせる、一番の方法があるのだ」
「え…」

その、邪魔な女の…

一体、どんな


「『さよ殿』はな……佐助」
「うん?」

幸村は、少し息を吸い込み、言った。





「――お前の……ことなのだ」





……?

佐助は、首を傾げる。


「…分からぬよな。慶次殿に言われ、おなごの名前を付けたのだ。――つまり、俺が焦がれているのは」

真っ直ぐに見据え、

「佐助――お前だ」





…佐助の表情は、微動だにしない。





「お前が越後に行っている際に、慶次殿に教えてもらった。…この想いの名を」

「驚くだろう?…佐助には、想うおなごがおるのに…気持ち悪かろうと…。――決して知らせたくはないと」

その声は、震えている。

「…初めから、こうすれば良かったのだな」
「――……」
「だからな…。本当は、嫌がっていたのではなく――。…心臓が、止まるかと思った。…お前が、あまりにも…」



――魅力的で。



「しかし…だからこそ辛く、て。――お前は違うのだというのに」

幸村は眉を寄せる。

「――すまぬ。今日は、もう…宿へ戻る」


短く言うと、スッと部屋から出て行った。
駆ける足音が遠のいていく。



小さくなっていた灯はとうとう消え、佐助の身体がゆっくり倒れた。







*2010.10〜下書き、2011.6〜アップ。
(当サイト公開‥2011.6.19〜)

あとがき


ここまで読んで下さり、ありがとうございます!

大切なのは、イメージです\(^o^)/

突っ込むべきところは多々あるかとは思いますが、あり過ぎて手に負えません。

佐助が捏造マキシマム(^q^)

指導っていう名目ですからね。それで冷静に進めてたさっけさんですが、内心バックバクだと良いな。

旦那に夢中になっちゃって最後に現実見て死にたくなるのか。
それとも途中で慶次のことが浮かんで泣きそうになるのか。でも止まれない。

ていうのもちょっと見てみたく。

破廉恥を素敵に書ければなぁ…(;_;)

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