想い5
今……何を言われたのだ?
幸村は目を見開き、そのまま微動だにできなかった。
…声も出ない。
「…友達として、じゃなくて。いや…」
慶次は考え直すように、
「そうなんだけど。でも、今も大事な友達だと思ってるのは嘘じゃない。最初から…これからもずっと、お前の友達でいたい」
「――……」
「だけど――それ以上にお前に惹かれちまって…。どうしようもなく、好きなんだ。お前が笑ってるとさ、俺も嬉しくなって…幸せになる」
固まっていた幸村の頭や、心臓がじわじわと動き出す。
「一緒にいて、すっげぇ楽しくて…。お前が辛そうにしてたら俺も苦しくなって、どうにかしてやりたくて。…と思ってたら、逆に俺が沢山救われたりして」
慶次は、幸村の束ねた髪に口付けを落とした。
「…ごめん、怒ると思うけど。何度も思ってたんだ、幸のこと『可愛い』って。本当は、お前めちゃくちゃ格好良いよ?強くて、男前で。なのに…多分、惚れ過ぎてさ。…気持ち悪いよな」
「そんなこと――」
やっとのことで声が出せた幸村は、必死に否定した。
「ありがと。…幸は優しいから。本当なら、そう思って良いってのに」
「…思うわけがありませぬ…」
どうしてそのようなことができようか。
自分もまた、同じ想いを佐助に寄せているというのに。
慶次殿が、自分のせいでこんなに苦しんでいたなんて。
なんと言えば良いのか…
「だって俺、お前と全然違うからさ」
「そのような…何も変わりませぬ」
「――変わるよ」
と、慶次はその熱い瞳を幸村へ近付けた。
「友達の振りしてさ、いつも何考えてたと思う?…どうして、元親と三人で部屋使うことにしたんだと思う…?」
普段とは別人のような低い声と、その炎にゾクリとする。
幸村の瞳が、ゆらっと泳いだ。
「…怖いよな?」
慶次は自嘲の笑みを浮かべ、
「いつもの俺でずっといられたら良いんだけどさ。それができないくらいなんだ…。心を……他の全ても手にしたい。――な?お前とはまるっきり違うだろ」
「……」
怖い…?
自分は、怯えた顔を見せたのだろうか?
…それは、少し違うような。
「――確かに、某とは違いまする……。しかし、それは某がよく分かっておらぬゆえ」
幸村は、慶次を引き留めるように、
「怖くなどありませぬ。…そうではなく、目が離せなかったのです。慶次殿の…」
その瞳や、声に。
慶次は目を閉じ、頭を振った。
「…これ以上勘違いしたら、俺は…。――まだ、手にしてないのに」
はぁ、と息を吐くと、
「びっくりさせて、ごめんな。これが、聞いて欲しかった話。…本当は夜の祭りで言うつもりだったんだ」
そのまま立ち上がる慶次を、幸村は何とも言えない表情で見ていた。
「幸の気持ちはもう知ってるけど――もし…。…少しでも可能性があるなら…」
考えてみてくれないかな、と言い残し、慶次は静かに部屋を出て行った。
…幸村は、ゆっくり布団の上に倒れ、息をついた。
一瞬で、その顔が朱に染まる。
…今になって。
――色々と理解した。
慶次殿が自分を。
(……す、…すす……好い、て)
あの瞳を向けられたのは、自分だということで…
見惚れてしまった、あの表情や声も――
かつてないほどの動悸が起こり、身体の痛みも疲れも吹き飛んだかのようである。
――初めてだ。
誰かにこのように想われ、告げられたのは。
こんなにも恥ずかしく…
…また、嬉しいものだとは。
それに…
『全ても手にしたい』
あれは…今思えば、そういう――意味であり…
幸村の顔は、火が立ち上がらんばかりに燃え始めた。
自由で、いつまでも少年のような雰囲気でいるから。…つい、忘れそうになっていた。
慶次殿は、大人なのだ……自分よりもずっと。
いつもの優しく暖かい彼と、先ほどの彼とではあまりに違う。…違うのだが――
…なのに、嫌ではなかったこの気持ちは…何なのだ…?
布団にくるまりながら、幸村は延々自問自答を繰り返す。
真の強さは手に入ったと思えたものの、新たに大きな悩みができてしまった。
結局、考え過ぎて頭が休みを必要としたのか、幸村は知らぬ間に再び眠りに落ちていた。
*2010.10〜下書き、2011.6〜アップ。
(当サイト公開‥2011.6.19〜)
あとがき
ここまで読んで下さり、ありがとうございます!
何という躍動感のない戦闘\(^o^)/
政宗と慶次づくしでした。
政宗の気持ちが、友達以上になるのが怖いようなそうじゃないような複雑な乙女心、って解釈にとれんこともない結果に。何で…
慶次の告白シーンは、あのシリアスなときの二枚目を想像してもらえるとありがたいですね(;_;)するとあの珍文でも…。大切なのはイメージです
こんな慶次がたまらなく好きです。
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