熱4
「…よし。じゃ、お前に良いこと教えてやるよ」
「良いこと?」
「ああ。…あいつが何だってそんな…色っぽくなったってことをだな…」
自分でその言い回しを選んだくせに、元親は猛烈な恥ずかしさに襲われた。
「元親、顔赤い」
「うるせぇ!!」
その赤を散らすように顔を振る。
「――まあ、見てろって」
「…?」
そう言ったなり沈黙し、しばらくが経った。
外で誰かの近付く足音がし、スッと襖が開けられる。
「あ、元親殿!もう、こちらに」
湯浴みを終えた幸村が、ほこほこした姿で入ってきた。
幸、と慶次が話しかけるより前に、
「幸村」
と、元親が…
――いきなり、幸村へ抱き付いた。
――はッ?
慶次も幸村も、呆気にとられている。
元親は、まるで恋人を腕の中にするときのように、優しく、だが力も込めてかき抱く。
そして、幸村の首元に顔を埋め――
「っおい、元親!」
我に返った慶次が、怒りの形相でその肩をぐいっと掴む。
すると元親はパッと幸村から離れた。
その切り替えの速さに、慶次は拍子が抜ける。
「――ほら」
と、元親は幸村へ目をやる。
「…驚き申した。――って、何だったのです、元親殿!」
幸村は、呆れた顔で言った。…いつもと変わりない、それで。
(――あれ…?)
「いや、悪ィ悪ィ。湯冷めしちまってよう!お前があんまりあったかそうだったから、ついな!」
何という言い訳。しかし、それでも信じるのが幸村である。
「それならそうと、先に言うて下され」
「悪かったって!いやーお陰で温まったぜ。ありがとよ」
少しも疑っていない幸村は、
「慶次殿は?…湯冷めしておりませぬか?」
「う、うん…大丈夫」
その答えに安心したように、幸村は布団へ潜り込む。
「おやすみ、幸」
「おやすみなさいませ…お二人とも」
間も置かず、静かな寝息が聞こえ始める。
二人はコソコソと部屋の隅へ移動し、
「…お前、ちょっと期待した?湯冷めしたって言やぁ、あいつ温めてくれたかもだぜ?」
「――それより、何だよさっきの」
「(図星かよ)…だから、良いこと教えてやったろーが?」
「何だ、それ?」
「分かってるくせによー」
元親はからかうように、「あいつ、さっき何も変わらなかったよな?…お前と同じことしてみたけどよ」
「…それ、確かめるために?」
慶次はようやく息を落ち着け、「あー、びっくりした」
「――何で、お前のときはそうなったんだろうな?」
「え…」
不敵に、元親が口端を上げる。
「俺や、政宗には…いつものあいつなのにな」
政宗の奴は少し不憫だけどな、と元親は心の中で苦笑した。
ここまで言って、分からねぇわきゃねーよなあ…
チラッと慶次を見てみると、その頬はうっすら赤くなっている。
「それによ、あいつのその、すげぇ想いってヤツ?…欲しくねぇのか?」
「……」
無言だが、否定しないことがその気持ちを告げたようなものだ。
「…ま、頑張れ」
小さく笑うと、元親も布団へ入った。
――俺も、大分耐性が付いたもんだぜ。
ウトウトと眠りへ落ちようとしていたところで、軽く揺さぶられた。
「…んだよ」
「場所、代わって…!ここ、絶っ対眠れねぇ!」
と、慶次が必死に幸村の隣を指す。
「どうせ…」
今日は眠れねーだろ。
そう思いながらも代わってやったのだが。
その先の布団の中で、含み笑う。
もう、俺は悩むのやめるぜ。
だから、お前も勝負しろよな――
*2010.10〜下書き、2011.6〜アップ。
(当サイト公開‥2011.6.19〜)
あとがき
ここまで読んで下さり、ありがとうございます!
はあ、もっとこう…美しく…さあ。ドッキドキなシーンみたいにしたいのに…なぁ。
(´Д`) 無念。
慶次は激甘、政宗はアダルティで。程度は自分本位ですが;
佐助は…色々(^m^)
佐助と旦那のイチャイチャこそ見たい。
けど、何でか慶次のがそーいうの多い…
言い訳あり過ぎて分かんなくなってきました。
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