咲く1
浅い知識では本当に生かせない(;_;)色々間違ってる。特に、言葉。
先に深く謝りたいです。
京都の皆様、本当に失礼しました。
どうか、お許し下さい。
※皆でキラキラな夜の街へ出掛けます。が、相変わらず色気なし…(--;)
宴の翌朝――
元親は幸村たちの部屋の前に来ていた。
政宗たちは呑気にも都巡りに出かけるとのことなので、特に予定のなかった元親は二人に付き合うと約束していたのだった。
今日は二人とも休日らしいのだが。
「おーい、お前ら」
中へ呼びかけるが、返事がない。
昨日の酒のせいで、まだ寝てやがんのか…?
しょーがねぇなぁ…と、元親は戸を開け、中へ入る。
「おい、そろそろ起きやが…れ」
そう言う語尾は小さくなっていき、勢い良く戸を閉めた。
その音で、幸村が目を覚ます。
「…ん…?」
まだ眠り足らないのか、寝惚け眼で元親の方を見る。
「幸村、お前――それ…!!」
元親は、口をパクパクさせながら幸村の傍らを指差した。
「…?」
覚醒しきれていない幸村は、ぼーっとしながら緩慢な動作で横を見る。――途端、はっきり目が覚めた。
そこにあったのは――同じ布団で眠る、慶次の姿。
「やっぱりお前らそういう…いや、良いんだ、俺は否定してんじゃねぇ…」
幸村は、急いで布団から出る。
「ちっ、違うのです、これは…!」
小声で、「…慶次殿が、寝惚けて。――酔うと、間違われるらしく」
「お前が入ってるのに?」
「そのくらい、飲み過ぎなのでしょう。…いつもは某が起きて、もう一方の布団に移るのですが」
「…じゃ、こいつ何も気付いてないってことか?」
「はい。元親殿も、口外しないで下され」
お頼み申す…と、幸村は馬鹿丁寧に頭を下げてくる。
「…おい、『いつも』って――」
「酒を飲んだ夜は必ず、なのでござる」
元親は、幸村の姿を見る。…結っていた髪はほどけ、着流しが少々乱れていた。
「…本当に大丈夫なのか?何かされたりなんざ…」
「…?何…とは…」
どうやら、最も心配していたことは起こっていないようで、息をつく。
――長い髪が絡まり、まとめるのに苦労している幸村を見かね、
「やってやろうか?」
と、ちょうど棚にあった櫛を手にした。
「…あ、それは慶次殿の…」
「構うこたねぇだろ。ほら、ちょっと貸してみろって」
幸村も、どうしようもない髪に諦め、元親に任せた。
(…男のくせに、えらく綺麗な髪だな)
滑らかで、触り心地の良い――
つい、長く指を絡めていたくなってしまう。
「元親殿?」
幸村の声に、はたと気付く。
「おう、できたぜ」
「すみませぬ…」
元親は軽く笑うと、
「このくらいで、んなかしこまんなって。いつもは自分でやってんのか?にしちゃあ不慣れな様子だったが」
「いえ…ほとんど他の者に…」
――佐助に。
「だろうな」
元親は、また少し笑った。
「なので、こちらに来てからはいつも結ったまま寝ているのですが…やはり某のやり方では駄目らしく。最近よくほどけているのです」
「ふーん…」
(…って、そりゃまさか)
元親は、布団の中の慶次を見る。
「――幸村、先に行って飯食っててくれ」
「え?しかし…」
「お前、宿の手伝いもあるんだろ?こいつ、俺が起こして連れてくからよ」
と、未だに起きる気配のない慶次を顎で指す。
「…すみませぬ。では、お言葉に甘えて…」
律儀に一礼し、幸村は部屋を去って行った。
(――さて)
腕を組みながら、元親は布団へと目を向けた。
慶次は、実は寝た振りをしていた。
元親が入って来た時点で起きたのだが、隣に幸村がいるのに気付き、そうするしかなかったのである。
二人の会話も、しっかり耳に入っていた。
(知らなかった…。俺、ずっとこんなこと…!)
全く身に覚えがなかった。
では、幸村は毎回そうして隠し通してきてくれたのか。慶次が恥じるだろうと気にして。
(何て情けねぇ…。どうしちゃったんだ、俺)
このところ、酒を飲むと決まって夢を見るようになっていた。昔の恋や…友の夢。
あの、初めて幸村と飲み交わした夜から、ずっと同じことをやっていたということなのか…。
いつも泥酔しているわけではない。――てことは、ほぼ無意識なのか?
(…どうしよう。シラフでも同じことするようになったら…)
元親が幸村の髪を整えてやるのを、薄目で見ていた。
――そうだよ、あれはきっと俺がほどいているんだよな…。最初のときのように。
果てしない自己嫌悪が、慶次を襲う。
「…おい、起きろ」
「いでッ」
頭を叩かれ目を開けると、そこには仁王のような顔の元親がいた。
「…おはよう」
「うるせえ。――お前、最初から起きてただろーが」
「…バレてた?」
「さっき、こっち見てただろ…。すぐ気付いたぜ」
(…どういう気配漂わせてたか、お前、分かってんのか…?)
喉まで出かかったが、元親は言い留まった。
「ありゃりゃ…」
「じゃねぇよ。…お前、どういうつもりなんだ?友達だとか言っときながら、あいつのことそういう――興味本位で試そうなんて腹か?酒のせいにしてよ」
怒りの形相で慶次の胸倉を掴み、そのまま上体を起こす。
「そんなわけないだろ!」
さすがに、慶次も声を荒げて否定した。
「…じゃあ何だよ。本当に寝惚けてるだけか?」
慶次は困ったように、
「…さっき、初めて知った。本当に覚えてないんだ。…自分でもわけ分かんねぇ」
はぁ、と溜め息をつく。
元親は、何か考えるように黙ったままだ。
「――夢を見るんだ」
「夢?」
「うん。…昔の夢。初めて惚れた女の。――今はどこにもいないけど」
何となく予想がついたのか、元親の目が少し和らいだ。
「酒を飲むと、その夢を見るってわけかい」
「そう…。そいつ、幸に似てるんだ。惚れた奴への想い方がさ…。あと、髪も。――だから間違える…のかな」
かと言って、自分のやっている行為がおかしいことに変わりはない。
慶次は、目を伏せた。
「その、惚れた奴…ってのは、お前のことだったのか?」
「残念ながら。…完全に俺の横恋慕」
「そりゃあ気の毒だったな」
元親が、ふっと笑う。
――お前って、そういう運命なのかもな。
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