too late to tell

(盛大な本編ネタバレ注意)



神様は不公平だ。人間に好きだとか、愛しているだとか勝手に感情を授けておいて、奪うことすらも唐突なのだ。学校に閉じ込められてコロシアイをしろなんて、私は恐怖に押し潰されそうになっていた。

「猫柳さん、いいんすよそんな怯えていなくても」

「自分の才能も思い出せないような人、信用出来るわけないじゃないですか」

震える声でそう告げた。直接人に否定的な言葉を投げつけたことなんてなくて、自分の心も痛むけれど。それでも自分が殺されてしまうという不安に比べたら、そんなのどうってことなかった。

「それは自分でもよくわかってるっすけど、それでも俺は猫柳さんのことが気になるっす」

私が1人にならないように常に隣にいてくれて、夜時間前には必ず私の部屋まで送り届けてくれた。そんな当たり前に私だけが甘えすぎていたのかもしれない。

「俺が必ず猫柳さんを救ってみせますから。任せてほしいっす」

いつものように部屋に送り届けてくれた天海くんはそう言って私を抱き締めた。心なしか彼も震えているような気がして、振り解くことは出来なかった。そのまま2人して私の部屋のベッドにもつれ込んで情を交わした。朝起きると彼はもう隣にいなかった。

体も心も怠くて、今日はこのまま部屋にいよう。そう決心した時に鳴り響いた死体発見アナウンス。血に塗れて横たわり、もう私に何の言葉もかけてはくれない優しい彼だったモノを、ただ呆然と見つめることしか出来なかった。

何を話すでもなく静かに隣で見守ってくれていて、たまに私が吐き出した不安を頷きながら包み込んでくれた。

「好き、だったのかも…」

結局心を許せていたのは彼だけだった。今更全ての気持ちに気付いたところで、もう遅すぎた。