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「大尉!」

「ん? ああ、これはナッツ軍曹じゃないか」

「なっ!? ナッツじゃありません、菜月です!」

「何だ? ナッツは不満か?」

「それに、バカにした言い方もやめてください!」

「あー、それは無理だな。だって、俺と歳二つしか違わないのに、お前はまだ軍曹だもんなぁ?」

「よ、余計なお世話です!」

「あははっ! お前をからかうの、ホントおもしろいわ」

「沖田大尉。まもなく出動のお時間です」

「お。判った。──じゃあな、ナッツ軍曹」


 返す言葉もなく、私は大尉の背中を恨めしく見つめながら、子供らしくべーっと舌を出すことでせいいっぱいだった。


 彼は私──こと、小鳥遊菜月の所属する青十字軍第7部隊の大尉──つまりは、私の上司に当たる。
 あんなふざけた人が私より二つ上で、優秀だなんて……ホントに悔しい。


「ナッツ!」

「はっ、はい!」

「今日は隣国と協定を結んでくる。行ってくるな」

「な、なんでそれを私に言うんですか?」

「何だ、見送ってくれないのか?」

「お断りします!」


 隣国で本国との協定を結ぶため、その警備として第7部隊が追従することとなった。
 だが、今回はあちらから少数でお願いしたいということで、大尉が指名した部下を連れていくこととなったのだが、私は選ばれなかった。
 仕方ない、私は武闘派というよりは救護に当たるのだから。


 青十字軍は各5つの部隊で職務が決まる。
 第1〜第5は前衛、第6〜第10は後衛と、その各部隊でさらに細かな任務で分けられているが、私たちの部隊は交渉やその交渉の警備隊という任務が命令されるのだ。
 沖田大尉は特に交渉術に長けていることで、尉官にまで登り詰めた。
 確かに沖田大尉の交渉術でいくつも停戦、協定を結んできた。

 ああいう性格だけど、憧れていることは否めなかった。

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