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「ふ……ん、んぅ……っ──はぁ……っ」


 突然のキスに頭がクラクラする……力が抜ける体を忍田さんは肩を抱き寄せることで私を支えてくれる。


「ごめん、合コンは行かないよ。俺には大事な彼女がいるから。──じゃあ結ちゃん、ちょっと行こうか」

「え……」


 無理やりその場を離脱させられた私。
 そしてなぜか私とのキスの瞬間を見せられたOLさんたちは顔を赤くして呆然と私たちを見送っていた。

 結果、なぜかエレベーターに乗せられ連れてこられたのは、誰も使っていない会議室だった。


「あ、あの……? ここ、会議室……それに会議は……」

「ごめん。本当は今日、会議なかったんだ」

「えっ?」


 忍田さんは会議室の鍵まで閉めてしまう。


「う、嘘だったんですか!?」

「え? あ、いや……その、俺の勘違いで。実は明日だったんだ」

「ええっ!?」

「ホントにごめんね」

「そ、そんなぁ……」

「ごめんね?」チュッと唇に一つキスを落として誤魔化そうとする忍田さんだったが、そうは行かない。


「もう……! おまけにあんな目立つところでキスなんて……何考えてるんですか!」

「ん……ごめん。でも、結ちゃんが今すぐにでも泣きそうな顔してたから」

「え?」

「妹だって言われたの、傷ついたんだろう?」

「そ、それは……だって、大学生なのは本当のことだし……会社の人たちだってみんな綺麗で大人だし」

「ははっ。そんなこと気にしなくていい」

「私は気になります!」

「そっか。でも、俺は結ちゃんを選んだ。好きになった。そこだけは自信持ってほしいな?」

「あ……」


 それは、そうなんだけど……。


「俺はどんな結ちゃんでも好きだよ。結ちゃんは結ちゃんなんだからね」

「ふふ……なんですか、それ……」

「ほら、笑ったところも可愛くて好き。俺は一度も後悔なんてしたことないよ。結ちゃんは俺の彼女。それだけでいいんだ」

「ふふ……なんか癪ですけど……」

「癪!?」

「でも……私も、忍田さんが彼氏でよかったです。忍田さんの彼女でよかった」


 本当にこの人は恥ずかしい人だ……。
 でも、そこがおもしろくて、愛おしくて、好き。
 この人はいつの間にか、私を笑顔にしてしまうんだ……。

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