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 綺麗な人だなあ、おまけにいい匂いもするし……。
 やっぱり受付嬢って鼻があるよね。


「はい、ありがとうございます。──黒川様、ただいま忍田は生憎席を離れているようでして……」

「え、そ、そうなんですか?」


 もしかして間に合わなかったとか……どうしよう!?


「あ、結ちゃん!」

「え? ──あっ……! 忍田さん!」


 一時期はどうしようかと思ったけれど、エレベーターから降りてきた忍田さんに声をかけられた。


「忍田さん、よかったです! 間に合ったんですね!」

「うん、本当にありがとう。助かったよ〜」


 よかった〜……間に合ったんだ……。


「あ、忍田さんじゃない? 忍田さ〜ん!」


 ん?
 今度は、エスカレーターから降りてきたのは3人のOLさんだ。


「ああ、お疲れさま」

「お疲れさまです! ──あれ? 忍田さん、その子は……?」


 3人の目が私に注目された。
 しかも、ちょっと痛い感じの……。


「え、えっと……」

「もしかして妹さんとか?」

「ああ、確かに大学生っぽいし!」

「へ〜! 可愛いですね!」

「あの……」


 彼女です、なんて言ったら笑われちゃうよね……。
 それに確かに妹ぐらいの年の差もあるし、無理もない……けれど、やっぱりそれはつらいな……。


「忍田さん、次こそは合コン来てくださいよぉ! みんな、忍田さんが来ること楽しみにしてるんですよ!?」

「絶対、忍田さんがいたほうが盛り上がるし!」

「ねえ、忍田さん!」

「あ……。じゃあ、私、帰り──」


 ちょっと、もう限界──かも……!

 目頭が熱くなってきて、この場から早く離脱したい──そう思って踵を返したところ、ぐいっと強い力に引っ張られた。


「え……」

「えぇ……?」


 私とOLさんの驚く声が重なったと同時に、私の視界には忍田さんが飛び込んできて、私の唇に忍田さんの唇が押しつけられていた。


「忍田さ──んん」


 はぁ、とお互いの吐息を確かめたあと、忍田さんの口唇がまた重なり合う……。


「ん……んんっ!?」


 忍田さんの舌がするりと入ってくる。
 まさかこんな不特定多数の人が往来するところでキス──それどころか、舌まで入れられて……。
 忍田さん、何を考えてるんですか!?

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