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 うーん……今日は講義も午前中までだったし、午後はバイトもないし。
 何しようかなぁ。

 特段これといった趣味もない私には、講義もバイトもない日は苦痛でしかない。
 平日だから忍田さんもお仕事だし……。

 なんて思いながら暇を持て余していると、スマホにメッセージが送られてきた。
 忍田さんからだ……なんだろう?


 ──『ごめん、確か今日は午後、バイトないって言ってたよね? 実は家に書類忘れちゃって。もしよかったら会社に持ってきてくれないかな?』


 書類?
 きっと大事な書類だよね!?


「わかりました、今から取りに行きます。今からだと14時ぐらいになっちゃうけど、大丈夫ですか?──と」


 すぐに返信すると、忍田さんも『それで大丈夫』と返ってきた。

 急いで取りに行かないと!
 慌てた様子だからきっと大事なものなんだよね、会議に使うものとか?
 そもそもそんなミスするなんてめずらしいな……。


 急いで支度をして忍田さんの部屋に向かうと、意外とすぐに書類を見つけた。
 書類は靴箱の上にクリアファイルに入れられた状態にあった、きっと急いで出かけたのだろう。

 バイト先も歩ける範囲にあるけれど、実は忍田さんの会社には行ったことがない。
 近くだとは聞いていたけれど……。


 駆け足気味に会社に向かう、会社はバイト先から20分ほどの場所にあった。


「うわぁ、大きい……」


 敷地も広く、高層オフィスビルを取り囲むように緑が多い広場。
 その広場のベンチでランチを楽しむOLの姿もちらほら。
 大手企業だとは知っていたけれど、改めて規模を見るとすごいところでやり手の営業されているんだなと思う。

 ──って、圧倒されてる場合じゃない!


「えーと、出入り口はここだよね……」


 エントランスに入ると、これまたフロアが広く、受付が遠く感じられる。


「あの、すみません」

「はい、いかがされましたか?」

「えーと……営業課の忍田俊介さんに頼まれて書類を届けに来たんですが……」

「ああ、営業課の忍田さん。かしこまりました、お繋ぎいたしますのでお名前をお伺いしてもよろしいでしょうか」

「あ、はい……。黒川結だと伝えていただければ……」

「はい、黒川結さまですね。かしこまりました」