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「おはよー、結!」

「絢未、おはよう」


 絢未は電車通学しているので駅の方向──私たちからすると背後──から絢未の声がかかった。


「おはよ! ──ん? 隣の人って……」

「忍田俊介です。おはよう」

「あー、噂の忍田さん! おはようございます!」

「噂って何……」

「きゃー、ホントにイケメン……かっこいいなぁ……!」

「あはは、ありがとう。絢未さん、だよね。よく話聞いてるよ」

「そうなんですか?」

「そうそう、細胞大好きのリケジョだって」

「忍田さん、絶対美化しましたよね?」


 確かに細胞馬鹿と言った。


「とにかく、お付き合いおめでとうございます!」

「ありがとう」

「いいなぁ、こんなイケメンな年上彼氏……。私も欲しい……」

「絢未には立花さんがいるでしょ?」

「あれ、まだ告白してないの?」

「こ、告白ぅ!?」絢未の大きな声がすっきりと晴れた青空に谺した。


「そ、そそそそんな! そんなことできないですよ、そんな恐れ多いこと!」

「判りやすいぐらいにテンパってるね。──いやいや、絢未さんも可愛いと思うけど? さすがは結ちゃんの友達だね」

「か、可愛い!? ホントですか!?」

「もちろんだよ」


 ストレートパンチを食らった絢未の顔は茹で蛸みたいに真っ赤だ。
 これが忍田さんの恐ろしさ……。


「忍田さんってホントストレートですね……」

「それにしても、研究がホントに大好きなんだってね。懐かしいな、俺も細胞の動きとか見るの好きだよ」

「ええっ、そうなんですか!? うれしいです〜!」

「忍田さんも理系なんですね」

「まあ、IT系だしねぇ」

「結はホントに理系苦手だよねー。逆に古典とか現代がわかんないよ」

「いやいや、物理とかのほうが意味がわかんないから」

「そう? 俺は文系も好きだけどなぁ。強いて言うなら世界史とかのほうがギリギリだったかな」

「歴史は苦手なんですか?」

「年号覚えるのがね」


 へぇ、そうなんだ……。


「あ、大学着いたね。じゃあ、俺は仕事に行くね」

「あっ、はい。ここまでありがとうございました」

「ありがとうございました! 忍田さん、またお話聞かせてください!」

「オーケー。俺も楽しみにしてるよ。今度はダブルデートなんかしてみたいなぁ」

「ええっ!?」私と絢未の声がシンクロする。

「とにかくがんばってね」