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休憩室でちょうど休憩していた立花さんに、忍田さんとの一件を話すと「あはは」となんだかうれしそうに笑っている。
「そうだったのか。何で忍田さんといるのかなーとは思ってたけど」
「もー。笑い事じゃないですよー」
「忍田さんはああ見えてぐいぐい行くからね」
「そうなんですかぁ……。立花さん、結構付き合いが長いんですか?」
「うん、まあね。俺が入ったのは5年前なんだけど、忍田さんは俺のトーストに感動してくれた初めての人なんだよね」
「へぇ、そうなんですか!」
「黒川さんが初めて入ってくれたときなんて、すぐに忍田さんが反応してたんだよね。あれ、一目惚れってやつだったらしい」
「えっ!? じゃあ立花さん、知ってたんですか!?」
「うん、まあね。忍田さんから口止めされてたから言わなかったんだけど……そっかぁ、いつの間にかプライベートでも仲良くなったかぁ〜」
「ちょ、ニヤニヤしないでくださいよ〜!」
「あははは、ごめんごめん。ま、せいぜい気をつけてね。まあ、忍田さんならそんな強引な真似しないとは思うけど……」
「え、それってどういう……」
「それは言えないよー。言っちゃうとセクハラになっちゃうし。──さて、そろそろ交代の時間だ。俺はこの辺で失礼するよ」
「あ、お疲れ様でした! すみません、貴重な休憩時間を邪魔しちゃって」
「いやいや。おかげでおもしろい話が聞けたよ。いやー、それにしても、この調子で夜には迎えに来てたら最高におもしろいんだけどね?」
「お、おもしろくないですからっ!」
「あはは、そう? まあ、仲良くね。黒川さんだって知ってるだろ? 忍田さんが悪い人じゃないくらい」
「え? は、はい……」
「だから、少しは付き合ってあげてもいいんじゃないかな。忍田さん、黒川さんといるとすごく楽しそうだしね」
「そ、そうですか?」
「そうだよ。何せ、2年も片想いしてたんだから。──じゃあ、お先に」
「は、はい。お疲れ様でした……」
パタン、とドアが閉まる音がした。
確かに……忍田さんが悪い人ではない。
むしろいい人すぎるくらい。
でも……やっぱり、怖いよ……。
もう、あんな辛い目はごめんだ──。