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「そっか。俺、すごく嬉しいよ。こうして結ちゃんとオムライス食べて、美味しいって言い合えるの」
「は、はあ……」
「だからさ。そんなつらそうにしないで、うれしそうに美味しく食べてよ。そんな顔で食べるなんてもったいないよ。せっかくこんなに美味しいんだから」
「忍田……さん……。そ、そうですね!」
そうだ……せっかく、こんなに美味しいオムライス……。
美味しいって思いながら食べよう……。
「でも……前のことは、本当にすみませんでした。変なこと訊いちゃって……」
「あー、あれか。そうだねぇ……お互い触れられたくないところがあるみたいだし。気にしなくていいよ」
「でも……っ」
「ある程度、歳を重ねれば誰しも一つや二つ抱えるものぐらいあるよ。──でも、もしどうしても気になるんだったら、そのうちでいいから結ちゃんの抱えてるものも教えてね。俺でよければ力になってあげたい。そしたら、俺もちゃんと話すから。──だから、今はよそう。ね?」
「は、はい……」
「それで、なんだけど。結ちゃんはなんでこんなところに?」
「あ……。今日は講義もなかったし、シフトも夕方だったんで……」
「そっか」
「忍田さんは平気なんですか? こんなところでのんびりしてて」
「あー。仕事のことか。今日はもう大丈夫。さっきの仕事だって急用だったしね」
「そうなんですか」
「結ちゃんはバイトまでここで買い物?」
「うーん、そうですね……。帰ってもすることないですし」
「そっかそっか。そだ、俺でよければ荷物持つよ?」
「えぇっ!? そっ、そんな、大丈夫です! 悪いですからっ」
「そう? でも、俺も帰ってすることないしなぁ。俺って仕事人間だから、あんまり趣味がなくてね。それに、結ちゃんともっといたいんだよ」
「えぇっ……」
さっきから、忍田さんがぐいぐい来るんだけどー!
忍田さんってこんなに積極的な人だったの!?
「うぅ……忍田さんのそのまっすぐさ、苦手です……」
「あはは、そう?」
結局、私はこのまま忍田さんの勢いに負けたのだった……。