「よろしくね」 - 01

「奏ー! 一緒に帰ろう!」

「う、うん!」


 応接室で山下君との一件のその日の放課後、友達が企画してくれていた歓迎パーティーのために一緒に帰ることとなった。


「うちらがね、いつも行く駅ビルのカフェでやるから!」

「楽しみです!」

「出た、また敬語! もはや口癖だね、それ」

「あはは……ごめんなさい……」

「あははは! 気にしないで!」


 校門をまもなく抜けようというところで、校門の塀にもたれかかる人影が見えた。
 それに気がついた友達の一人が声を上げた。


「あれっ、芦屋じゃない?」

「芦屋……?」

「そっ。爽やかイケメンって誰かが言ってたんだよねー」

「そうそう! めっちゃ優しくて! 正直、私は山下よりは芦屋かなーっ」

「へー……」


 そう言えば、私を助けてくれた人もそうだったなぁ……。

 思い出したくはないが、一応、保健室まで運んでくれたのだ、後で礼を言わなければ。


「誰か待ってんのかなぁ」


 みんなが突然、おそるおそるといったように歩き出したので、つられて私も忍び寄るように歩く。


「ぅわっ、こっち見た!」


 気配を消していたつもりだったのか、相手が私たちに気がつくと誰かが驚いたように声を出す。
 そして向こうはにこやかに手を振ってみせた。


「何してんの?」

「あっ、いやっ……なんでも……あはははー!」


 苦しくないですか、それ……ここはあえて突っ込まないでおこう。


「そっちこそ、何してるの」

「ん、俺? 人探し」

「人探し?」

「そっ。知ってる? 隣の『坂下』って子、探してるんだけど」

「坂下って……奏のこと?」

「えっ? 私……?」


 咄嗟に声を上げると、男子と目が合うや否や、「ああー!」と声を上げてきた。


「そうそう、君!」

「え……もしかして?」

「そっ、あのとき助けたヤツ」

「あっ、ああ……っ!」


 ようやく思い出せた、あのときの顔だった。
 何分、こちらもやっとやっとのことだったので……。


「あー、そっかー。へー、奏ちゃんって言うんだ?」

「え、あ……はい……」

「何、この子たちと帰んの?」

「あ、まあ……」

「ちょっとした寄り道!」

「へー。じゃあさ、俺もついてっていい?」

「ええーっ!?」
- ナノ -