「ウソでしょ!?」 - 01

「もう、すっごいかっこよかったんだからぁ!」

「あら、ホントに!? お母さんも見てみたかったわぁ〜」

「もう、やめてよ……」


 母と姉は帰ってから、いつまでも山下君のことで盛り上がっていた。
 父もうんざりしてしまったようで、野球を静かに観覧している。


「だから、奏ってばイメチェンしたのね〜。分かるわよ、私もそんな日があったわ」

「だから、違うんだってば〜。もう、その話、何回目なの?」

「だってイケメンでしょ!? 女なんだから、興奮だってするって! 奏の学校って、結構美男美女多いよね! 生徒会長もイケメンだし」

「ああ、成瀬君ね! ホント、イケメンよね〜」

「もう、ミーハーなんだから……。私、寝る」

「ええー! もっと聞かせてよ、山下君の話!」

「二人で勝手に盛り上がってるだけじゃん!」


 弁解するのも疲れた私は、一足早く自室に戻ることにした。


「ふぅ……。あんなに盛り上がっちゃって……」


 ベッドに倒れ込み、まっさらな天井に向かって呟く。


 でも……山下君が背負ってくれたなんて……。


「重くなかったかな……。明日、ちゃんと謝ろ……」


 それにしても、女子たちに見られてないかな。
 見られてたら、大変だ。
 気をつけなきゃ。


 好きで地味でいたわけではないけれど、やはり今まで平穏に過ごしてきたのだ、なるべくだから静かに高校生活を終えたい。


 もやもやする……。
 こういうときにはいつも、オモチャで気を紛らわせてきた。


 ベッドから起き上がり、クローゼットを開いて奥の方へ手を伸ばすと、小さな箱を取り出した。
 開くと、今まで集めてきたオモチャが中に入っている。
 ローターやバイブなど、いろいろ試してみたが、その中でローターの方が痛みが少ないことからローターを愛用している。


「これかな……」


 選んだのは、強弱だけでなく、振動のタイプも違うものだ。


 そして、いつものようにローションで少し慣らしてから使用を開始した。
- ナノ -