「私の秘密」 - XX

 オレンジ色に染まる、放課後の教室。
 元気に部活に励む生徒達の声がよく聞こえる。
 そんな窓まで追いやられた私。
 私の目の前にいる、夕焼けに染まる綺麗な顔。
 日常の中に密かに佇む、非日常。


 今までの私なら、こんな距離に彼の顔は絶対にない。
 ──なのに……。


「なあ、坂下」

「は、はい?」

「お前、すげーやらしい匂いしてる……」

「えっ?」

「お前さ……」


 彼の低い声が私の耳元を刺激し、彼の甘く、優しい香りが鼻を刺激し──そして、呟いた……。


「お前の秘密、教えろ」


 絶体絶命のピンチ。
 ここで口を開いてしまったら、もう戻れない。


 ──どうして、こんなことになっちゃったの?

 誰か、教えてください……。


 私の叫びが教室に響くことはない。
- ナノ -