「好きです」 - X1

 ─真宙side─



 最初はただの興味本位だけのはずだった。



「オーイ、真宙ー。遊びに来てやったぞー」


 高校を休んで早4日目。
 いつもつるんでいるグループが家に上がり込んできた。


「お願いしたつもりねぇけど」

「だって、つまんねぇじゃん。真宙いないし」

「邪魔だ。さっさと帰れ」

「ひっで!」


 リビングのソファでただ寝そべっていたいのに、とんだ邪魔が入った。


「まあまあ。とりあえず、ゲームしようぜ!」

「急に来てそれかよ……。勝手にやれば」

「うっわー。冷てーの」


 とか言いつつ、俺の部屋からテレビゲーム機を持ってきて、リビングのテレビでやり出した。


「あのさ……どっか行ってくんね?」

「えー? 何でだよ、ここのテレビが一番でけーじゃん。──あぁ! 不意打ち汚ぇぞ!」

「お前がよそ見してるからだ!」


 ったく、勝手なヤツら……。


「あっ、そうそう。坂下も久しぶりに学校来たぜ?」

「は? 何、風邪でも引いてたのかよ?」

「さあねぇ。でもさ、元気なかったぜ?」

「あっ、さては飽きてフッたな!?」

「マジ!?」


 そもそも付き合っていた事実はない。


 返答しない俺を差し置いて、話は勝手に進む。


「っしゃ! じゃあ、坂下と付き合っかなー! ずっと狙ってたし!」

「うわ、マジで!? じゃあ、予約しとくわ」

「はぁ!? 俺、簡単に別れねぇぞ!」


 やめろよ。


「どんな風に鳴いてくれんだろうなぁ。声可愛いし、ヤバそうだよな!」

「フェラとか上手ぇの、坂下って? 俺のバナナ、ジュポジュポ吸ってー」

「やめろよ、そういうこと言うの」

「は?」

「やめろっつってんだよ、胸クソ悪ぃ」


 マジでやめろ。


 あれは……俺のだ。


 坂下の匂いは俺を誘い、俺はその匂いにいつからかやられていた。
 そして、アイツは俺のだ──とか、よく判らない感情を抱いて、いつの間にかアイツを抱いていた。
 今まであっさりとしていた欲求が、あとから湧き上がってくるんだ。
 いつからか勝手に独占欲が迸って、むしゃくしゃにどうしようもなく、抱きたくなるんだ。


「お、おお……悪い……」


 くそ……何だって、急に──突然に、アイツの顔が見たくなるんだよ……。



─真宙side 終─
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