「デートするぞ」 - 14

 ──それからは、お昼を食べて、タピオカを飲んだり、アクセサリーショップを巡らされて……さんざん連れ回された気がする。


「ま、こんなモンだろ。帰るか」

「は、はい……」


 今日は何もされなかったな……。


 ──そう思って十数秒。
 はっとして、その考えを体現して振り払う。


 何、考えてるんだろう……。

 私ってば、何を期待して──。


 ──ポツ


「えっ?」


 鼻先に感じた、粒。
 少しすると、それは線になって、やがてザーッと雨が降り出してきた。


「う、うそっ……」

「雨かよ! どっか、雨宿りするぞ」

「は、はいっ」


 その通りにいた人たちが慌てふためいて、軒先に避難する。
 私たちが行く先々には既に人の姿があって、ひたすらに走る。


 走り出して、数分して誰も雨宿りしていない場所を見つけて、やっと避難することができた。


「すごい雨ですね……」

「こんな時期にゲリラかよ……くそ」


 すっかりずぶ濡れの状態だ。
 私は山下君が購入してくれた服が替えとしてあるからいいが、山下君にそれはない。


「仕方ねぇか……。ここにちょっと雨宿りさせてもらうか」

「え?」


 何を言っているのだろうかと、辺りを見渡してみると、ちょうど雨宿りしていた場所はホテルだった。


「えっ、ここに入るんですか!?」

「仕方ねぇだろ。俺なんて着替えねぇし」

「そ、それはそうですけど……」

「金もあるし、大丈夫だ。入るぞ」


 そういう問題でもない、と言いたいが、聞く耳を持ってくれなさそうなので、山下君の意見に同意することにした。


 受付を受けて、エレベーターで目的の部屋に到着した。


「ここだな」


 鍵を開けて中に入ると、山下君が「先にシャワー浴びてこい」と言う。
 普通なら、着替えのない山下君が先に入って服を乾かすべきだと思う。
 しかし、どうせまた聞いてはくれないだろうと思い、お言葉に甘えることにした。


 服を脱ぎ捨てると、一つ吐息が洩れる。


 なんで、山下君とホテルなんかいるんだろう……。

 なんだか、変な展開になってしまった。


 あれこれ嘆きたいことが山ほどある。
 しかし、ここは早くシャワーを浴びて、山下君に入ってもらって、早くホテルから出ようと思い、浴室に入った。