「デートするぞ」 - 13

 山下君って、意外と優しいんだなぁ……。

 口調は相変わらずなのに、こんな服を買ってくれるなんて。

 ちょっと驚いた……。


「とりあえず、この辺ブラブラすっか……。何か気になったら言え」

「分かりました……」


 第2の原宿とあって、人が多い。
 アパレル、アクセサリー、食べ物屋……いろいろあって、それぞれの店に吸い寄せられるように人が入ったり出たり、そしてまた彷徨う。


 こんな人の多い場所は滅多に行かないから、苦手だ……。


「つーか、もう昼過ぎてんのか……。どっかで飯、食うか」

「は、はい、分かりました……わ!」


 ドンッとカップルの男性の肩に当たり、よろけてしまう。
 それをすんでのところで、山下君が私の腕を掴んでくれたおかげで、転ばずに済む。


「ったく、危ねぇな……」

「ご、ごめんなさい……」


 山下君ははぁ、と一つため息吐くと、腕を掴んでいた手が下へ向かい、私の左手を握った。


「え……」

「お前、そそっかしいからな……。そのうち、はぐれたら面倒だ」


 山下君のひんやりと冷たい右の手が、私の手を包み、歩き出した。
 私の左の手は熱いのではと思ってしまうほどの冷たさに、私の手が本当に小さいのだと分かるほどの大きさで。
 手を繋がれているのだと実感できて、すごく恥ずかしい……。


「あ、あの。はぐれたりしませんから……」

「うるせぇ」


 山下君を私に顔を向けることなく、人だかりを突き進んでいく。
 私は初めて、男子に手を握られ、ドキドキが止まらない。


 私、山下君と手を繋いでる……。

 これも、フリのため?

 そうだとしたら、私たちはホントにカップルに見えてるのかな……。


 山下君の背中を見つめながら、山下君の服装を思い出す。


 青いカーディガンを羽織って、下には白のシャツを来て、ジーンズを履いている。
 今ではそのカーディガンの袖をまくって、男子の筋肉質の長い腕が見えて。
 それに加えて、黒のスニーカーというラフでありながら、カジュアルスタイル。


 私の服装を足しても、カップルに見えるのだろうか……。