「デートするぞ」 - 12

「ぃやった〜! やっと真宙の首を縦に振らしたよ!」

「お、おめでとう……」


 私が喜ぶよりも、心歩ちゃんのほうが大喜びしている……。
 なんだか、不思議な絵だ。


「お前が喜んでどうすんだよ……」

「微妙しか言われなかったら、さすがに傷つくけど!?」

「あ〜、悪かった悪かった。判ったから、いい加減喜ぶの、やめろ」

「は、はいはい、分かりましたぁ!」

「うぜェ!」

「ふふっ……すごいおもしろいですね」

「もう、笑い事じゃないんだってば!」

「マジうぜェ……。オイ、いくらだ。さっさと払って帰ってやるから」

「そうだねぇ……3万で!」

「高ぇんだよ」

「冗談だってば……睨まないでよ、もう……。1万7千でいいよ〜」


 山下君はさも自然にお財布を取り出して、払おうとする。


「ま、待ってください! えっ、山下君が払うんですか!?」

「はぁ? 当然だろ」

「い……いやいやいや! さすがにこんなにしてもらったのに、払ってもらうなんて……悪いです!」

「お前、意外と義理堅いのな……。いいっての。ここは奢らせろ。まだ他にも行くんだから……」

「で、でも……」

「まあまあ〜。あのドケチの真宙が奢るって言ってんだからぁ〜」

「誰がドケチだ、このやろ」

「こ、こっわっ! ほらほら、奢ってもらっちゃえ!」

「は、はぁ……」

「ったく……んなこと、気にしなくていいのに」

「2万円は十分すぎると思います……」

「あはは。おもしろいねぇ、2人とも〜。結構、お似合いだよ?」

「からかわないでください……」

「はい、2万円ね。3千円のお返し。──じゃあ、また来てねぇ〜。奏ちゃーん」

「また来るね」

「安心しろ。また一緒に来てやるから」

「いや、真宙はいいや……」

「お前、相変わらず最後までムカつくな……」


 心歩ちゃんに笑顔で見送られ、次の場所へ向かう。


「つ、次はどこに行くんですか?」

「あ? そうだな……何も考えてねぇわ」

「えっ!? さっき、他にも行くって……!」

「あれ、嘘だ」

「えぇっ!?」

「ふはっ、すげーおもしれぇリアクション。ああでも言わなきゃ、お前、食い下がっただろ? 面倒だから、嘘言った」

「えぇ……じゃあ、後でお返しします」

「今さらいいっての。それより、少しはオシャレってヤツを感じろ」

「はぁ……」