「デートするぞ」 - 11

「何者って……。えーと……、少し前まで地味だったから、少しでもオシャレってものを叩き込もうとしてるだけかと……」

「うっそ!? 奏ちゃん、地味だったの!? 全然、見えないわ〜」

「あはは……」

「よーっし、髪できた! うわぁ、めっちゃかわいい!」


 姉がしてくれたときよりももう少しくせをつけた髪にした心歩ちゃんは、次に服を探しはじめて、私に押しつけて着替えさせた。


「じゃ〜ん! 真宙、どう?」


 カーテンを開けると、どこにあったのか、目の前に椅子に座って待っていた。
 おまけに腕まで組んで、まるでプロデューサーのような出で立ちだ。


 押しつけられたのは、パンク系のスパイシー系。
 ボトムスは絶対に履かないショーパンで、すごい恥ずかしい。


「微妙。完全にお前の趣味じゃねぇか」

「何よ〜。可愛いんだもん、似合ってるでしょ?」

「次」

「はいはい。相変わらず、厳しいんだからぁ」


 また奥へ引きずり込まれ、綺麗系、シルエットが大きいもの、お姉さん系、スポーティ、ギャル系……などなど、いろいろ着させられた。


「ん〜。どれもこれも似合ってんのに、全然頷いてくんないんだけど!? ねっ、どういうこと!?」

「わ、分からないってば……」


 山下君の評価はたった一言。「微妙」。


「こうなったら……うん! やっぱり、あたしが可愛いって思ったものを着せてやるぅ!」


 突然に豹変した心歩ちゃんはすごい勢いであれやこれやと服を私に渡して、吟味した結果のものを山下君にお披露目した。


「じゃ〜ん! 心歩、渾身の一撃!」


 白のブラウスにベージュのフレアミニスカートというシンプルのコーデ。
 未だにミニスカというものに抵抗感があるが、「これじゃなきゃダメ!」と強く言われてしまい、仕方なく履くことに……。


「参ったか、真宙!」びしっと山下君に向けて人差し指を突き出した。


 しかし、山下君は心歩ちゃんの言葉に耳を貸すことなく、私のことをただじっと見つめていた。


 え……?

 似合ってない……かな?


 今までだったら、すぐに「微妙」と切り捨てられたのに、何も言わない時間が数分続き……。


「真宙……?」と心歩ちゃんがおそるおそる声をかけると、山下君はぼそりと「いいんじゃね?」とやっと口を開いたのだった。