「デートするぞ」 - 10

 奥の個室へ案内されると、中よりも服が置かれていた。


「じゃあ、ここに座ってね〜」

「は、はぁ……」


 大きな鏡の前にこじんまりと設置された椅子に座ると、心歩さんは後ろに立って私の髪に触れる。


「ん〜。いい髪質〜。あたし、この髪質好きだよ!」

「あ、ありがとうございます……」

「ああ、いいって。敬語は〜。あたし、硬っ苦しいの、大嫌いなんだよねぇ」


 のんびりとした口調を聞いていれば、確かにそんな気がする。


「それと、さんとかやめてね! 気軽に心歩でいいから。もしくはみぽりんとかでもいいよ〜」

「み、みぽりんだけは勘弁してください……」

「あはは、冗談冗談〜。それにしても、センスあるね、服!」

「そ……そう、かな? でも、友達が持ってきてくれたものだし……」

「ふ〜ん。でも、それを着こなしてる奏ちゃんはセンスあると思うよ。自信持って!」

「あ、ありがとう……」


 なかなかにストレートに言ってくれるなぁ……。

 姉もこんなタイプだから、少し敬遠……。


「ん〜。でも、奏ちゃん、どんなのでも似合いそ〜」

「は、はぁ……」

「ちょっと遊んでいい?」

「あ、遊ぶ?」

「ちょっと、うずうずしてきちゃった!」


 そう言って、心歩──ちゃんが髪を弄り出した。
 その間、私は暇なので、気になっていたことを訊いてみることに。


「えーと……心歩──ちゃん?」

「ん、何〜?」

「山下君とどんな……?」

「どんなって……なんでもないってば〜。ここって、紹介制にしてるんだよねぇ。え〜と、芋づる式? って言うんだっけ……友達から友達からって感じにね。こうやって、1体1で話して、いろんな服着てもらって、そんでオシャレに対して興味とか、好きになってもらいたくって……」

「へぇ〜」

「だから、真宙とは当時付き合ってた女の子が一緒に来たから、それで知り合ったってわけ〜。ま、それ以来はときどき1人で来るだけなんだけど……で、今日が1年ぐらいに久しぶりに会ったってわけよ」

「へぇ……」

「でも、ホント初めてなの! 真宙が女の子連れてくるなんて! 奏ちゃんナニモノ!?」