「デートするぞ」 - 08

 姉に青葉駅まで連れて行ってもらう。
 青葉駅は上下線どちらに乗っても都市部につながっているので、利用者が多い。



「いやぁ、相変わらず賑わってるなぁ」


 そして、姉が普段通っている会社も青葉駅の近くにあったりする。


 そう言えば、正確な待ち合わせ場所を教えられなかった、普通に考えるに改札前だろうか。


「えーっと……多分、青葉だから、オブジェの前かな……」


 言われてみれば、駅前に大きな木のオブジェがあったような気がする。
 姉から聞くに、目立つから、よく待ち合わせ場所の目印として使われるとのこと。


「あ、いた」

「えっ? どこどこ!?」

「ほら、ロータリーの近く……」


 姉の車に乗せてきてもらうことを予想していたのか、ロータリーの入口に人影があった。
 なぜ、山下君の姿が分かったかと言うと、周囲に女性の姿が多いからだ……。

 うわぁ、近づきたくない……。


 しかし、そうも行かないので、姉が山下君の前に停車する。


「はい、お待たせー」

「あ、ありがとう……」


 おそるおそる降りると、山下君の第一声の前に周囲の視線が思いきり突き刺さった。

 すごい、やだよ……。


「お、お待たせしました……」

「あ? おう」


 私の服装を察してか、近くに様子を窺っていた女性たちが散り散りになって、いなくなったのだった。


「ご、ごめんなさい……。なんか、いろいろと……」

「まあな。俺も久しぶりに囲まれたわ」心底嫌そうに吐き捨てる。


「山下君、久しぶり!」

「あ、お久しぶりです」


 しばらく私たちを見守っていた姉が、助手席側の窓を開けて挨拶する。


「今日は奏をよろしくねー! 好きにしていいから!」
と言いながら、山下君にウインクする姉。
 それは一体、どういう意味で言っているのだ。


「ちょっ……! お姉ちゃん、それってどういう……!」

「じゃあ、また迎えに来るから、連絡してね!」


 笑顔で手を振った姉は、すぐに窓を閉めて走り去ってしまった。


「もう……」

「すげー勘違いされてるぞ、お前」

「えぇっ!? っていうか、どうして山下君も否定してくれないんですか!」

「いや、相変わらずお前の姉貴っておもしれぇなった思ってさ」

「感心してる場合ですか!?」

「いや、悪ぃ。ついな」


 ついって……悪ノリが過ぎるよ……。