「デートするぞ」 - 06

 友達をそれぞれ家まで送り、帰宅した。


 一緒に部屋に入り、荷物をベッドの上に置いてもらう。


「お姉ちゃん、今日はありがとう」

「いいって、いいって〜。私も欲しいもの買えたし、奏の友達とも仲良くなれたし〜。何より、奏が楽しそうでよかったよ!」

「うん……ホントにありがとう」

「奏の笑顔……可愛ー!」


 ぎゅっと強く抱きしめられ、また苦しい思いをする。
 しかし、それは長く続くことはなく、意外にも姉の方からあっさりハグが終わった。



「ホントによかった。奏が楽しそうで」

「お姉ちゃん……」

「これからも仲良くしてもらいなね」

「うん」

「あとは、デートを成功させるのみよ!」


 ぐっ──と拳を作る姉、明らかに私より気合いが入っていて、「あ、うん……。そうだね……」と引き気味に応える。


「明日の何時まで?」

「11時って言ってたけど……」

「じゃあ、9時ぐらいにはセットするからね!」

「えっ? セット?」

「そうよー。髪のセットには特にかけるからね!」

「う、うん……。分かった……」


 すごい気合いの入れようなんですが……。


「よーし! 気合い入れちゃうからね〜! じゃっ」


 お出かけは明日だというのに、姉はすっかりやる気満々で自室に戻ってしまった。
 確かにスタイリングなどは姉のほうがすごいから、助かるには助かるのだけれど……正直、不安です。


 紙袋に入った服を取り出して、姿見の前で体に合わせてみると、本当に可愛くて……。
 何より、このチュールが可愛い。


「山下君……どんな反応してくれるかな……?」


 ──が、しかし、すぐに我に返る。


 私ってば、何言ってるんだろ……。


 これはあくまで事実を作るまでで、山下君にはなんの意図もない。
 期待してはならない……。


 自分にそう言い聞かせて、ワンピースをハンガーにかけたのだった。