「私の秘密」 - 03
──翌日、いつものように授業中に1人エッチに浸り、中休みに入ったのでトイレへ向かう。
「──お、坂下。待ってくれ」
「は、はい?」
教室を出てすぐ、急ぐ私の足が担任の先生に呼び止めによって強制的に止まる。
「悪いな。次の授業で使いたい教材があるから、準備室から持ってきてくれないか?」
「は、はい……。大丈夫ですけど」
「おー、そうか。助かる。まあ、女一人じゃ大変だから、誰かに手伝ってもらえ」
「は、はい……」
とは言っても、仲がいい友達がいるわけでもないのに、誰に頼めって言うんだろう。
誰かに頼むこともできないなら、いっそのこと、2往復すればいいだけのこと。
「──だったら、俺が手伝うわ」
「え?」
思いもよらぬ事態に困惑していると、すぐ耳元で声が聞こえてきた。
覚悟を決めていたのだが、まさかこんな自分のことを手伝ってくれる人がいたのかと驚き顔を動かせば、ありえないほど近い距離に山下君の顔があった。
さらに驚かされた私は、心臓が大きく飛び跳ねる。
嘘っ、山下君が!?
先生も意外な人物の登場に、驚嘆とも感嘆とも言えない──言わば関心の声を洩らす。
「おー、珍しいな。お前が率先して動くなんて」
「別に。たまたま耳に入っただけだし」
「ふん、相変わらず可愛くないなー、お前」
「別に、先生に可愛いとか思われたくねぇから。つーか、可愛くなりたくもねっつーの」
「あー、はいはい。じゃあ、2人とも頼んだぞ」
先生は職員室に用事があるらしく、私たちに背を向け手をひらひらと揺らしながら歩いていった。
「んじゃ、行くか」
「は、はい……」
山下君が歩き出したので、その後を追う。
「にしても、俺って坂下としゃべったことなかったよな」
「え? あ、は、はい……そうですね……」
突然、話しかけられて思わず怯みながらも、応対する。
昨日、ぶつかったときのことは会話したとは言えないから、カウントされていないんだろう。
いや、もしかしたら、ぶつかったことすらも忘れられていることもある。
どちらかと言えば、後者の方が可能性高いんだろうなと思うと、少し悲しい。
「そういや、昨日は大丈夫だったか?」
「え?」
「いや……昨日、ぶつかったから……。何か、変なこと言ったか?」
「あっ、いえっ、そうじゃないです……。はい、どこも痛くないし、怪我もしなかったので」
「そっか。そりゃよかった」
昨日と同様の安心した笑顔を作ってくれる。
お、覚えてくれてたんだ……。
うれしいかも……。
些細なできごとだったし、私は地味だから、そんな自分のことを覚えていてくれていたことがこんなに胸の奥が暖かくなるほど、うれしい。
「──お、坂下。待ってくれ」
「は、はい?」
教室を出てすぐ、急ぐ私の足が担任の先生に呼び止めによって強制的に止まる。
「悪いな。次の授業で使いたい教材があるから、準備室から持ってきてくれないか?」
「は、はい……。大丈夫ですけど」
「おー、そうか。助かる。まあ、女一人じゃ大変だから、誰かに手伝ってもらえ」
「は、はい……」
とは言っても、仲がいい友達がいるわけでもないのに、誰に頼めって言うんだろう。
誰かに頼むこともできないなら、いっそのこと、2往復すればいいだけのこと。
「──だったら、俺が手伝うわ」
「え?」
思いもよらぬ事態に困惑していると、すぐ耳元で声が聞こえてきた。
覚悟を決めていたのだが、まさかこんな自分のことを手伝ってくれる人がいたのかと驚き顔を動かせば、ありえないほど近い距離に山下君の顔があった。
さらに驚かされた私は、心臓が大きく飛び跳ねる。
嘘っ、山下君が!?
先生も意外な人物の登場に、驚嘆とも感嘆とも言えない──言わば関心の声を洩らす。
「おー、珍しいな。お前が率先して動くなんて」
「別に。たまたま耳に入っただけだし」
「ふん、相変わらず可愛くないなー、お前」
「別に、先生に可愛いとか思われたくねぇから。つーか、可愛くなりたくもねっつーの」
「あー、はいはい。じゃあ、2人とも頼んだぞ」
先生は職員室に用事があるらしく、私たちに背を向け手をひらひらと揺らしながら歩いていった。
「んじゃ、行くか」
「は、はい……」
山下君が歩き出したので、その後を追う。
「にしても、俺って坂下としゃべったことなかったよな」
「え? あ、は、はい……そうですね……」
突然、話しかけられて思わず怯みながらも、応対する。
昨日、ぶつかったときのことは会話したとは言えないから、カウントされていないんだろう。
いや、もしかしたら、ぶつかったことすらも忘れられていることもある。
どちらかと言えば、後者の方が可能性高いんだろうなと思うと、少し悲しい。
「そういや、昨日は大丈夫だったか?」
「え?」
「いや……昨日、ぶつかったから……。何か、変なこと言ったか?」
「あっ、いえっ、そうじゃないです……。はい、どこも痛くないし、怪我もしなかったので」
「そっか。そりゃよかった」
昨日と同様の安心した笑顔を作ってくれる。
お、覚えてくれてたんだ……。
うれしいかも……。
些細なできごとだったし、私は地味だから、そんな自分のことを覚えていてくれていたことがこんなに胸の奥が暖かくなるほど、うれしい。