「デートするぞ」 - 03

「で、いつ行くの!?」

「え? に、日曜……だけど」

「じゃあ、土曜日に買いに行こう!」

「え? い、いいよ! そんな……」

「いいの、いいのー。久しぶりに一緒に買い物行こう!」

「えぇ……」


 全く引き下がってくれる様子がない。
 それどころか、「あっ!」とまた閃いたようで、目がキラキラと輝き出して活き活きしだす。


「ついでにお友達も誘って、一緒に行こう! 会ってみたいのよね〜。奏と付き合ってくれてるんだから、きっといい子たちだろうし。仲よくしたいなぁ」

「ま、まあ……そういうことなら……」

「あっ、もちろん〜、私とデートでもしよっか?」

「け、結構です!」

「うわーん、奏にフラれた〜」

「もう、やめてよ〜」


 なんとなく会わせたくない……。


 しかし、また暴走が始まることを防ぎたいなら、ここは妥協するしかない。


「分かったよ……。友達、誘ってみる……」

「えっ、ホント!? やったぁ、ありがとう! 奏!」


 ぎゅうっ──モモンガのように大きく腕を広げ、私の体を包んだ。
 あの慎ましい姉の体に押しつぶされてしまいそうなくらいの強さで、苦しい……。


「お、お姉ちゃ……苦し……!」

「奏、大好きー。私の奏ー」


 ホント、シスコンなんだから……。

 どうして、母といい、姉といい、こんなにテンションが高いのか。
 きっと、私は父に似たのだろうな──としぶしぶ実感した。


「一緒に、可愛いの買おうね!」

「う、うん……ありがとう……」


 なのに、不思議だ……。

 こんなにも大きな愛に包まれているのかと思うと、いやな気がしないんだ……。

 きっと、母と姉の大袈裟な愛情表現に毒されてしまったんだ……。


 姉はそのまま母が「ご飯よー」と呼びに来るまで、私をずっと抱きしめていた。
 そんな瞬間を目撃した姉の遺伝子を持つ母ですら、「暑苦しいわね」と引いていた……。
- ナノ -