「デートするぞ」 - 02
「うーん……」
家に帰って、クローゼットから適当な服を選んでベッドの上に並べてみて、首を捻る。
友達と遊びに行くことこそは増えたものの、今まで彼氏ができたことも、ましてや男子と遊びに行くこともあるはずもない私は、そんなお出かけ服は持ち合わせていなかった。
「日曜、かぁ……」
ぼふんっ──散りばめられた服の上に倒れ込み、呆然と天井を見つめる。
そもそも、どうしてデートに誘ったこと自体、分からない。
あくまでフリなのに、そこまでする必要があるのだろうか……。
「分かんないよぅ……」
どうして、こんなに山下君に振り回されているのだろう。
どうして、こうなってしまったのだろう……。
「奏ー! ──うわっ、何!? どしたの!?」
「お、お姉ちゃん……痛い……」
失礼この上なくバァンッと扉を開けるや否や、仰向けになっている私の上体を起こして手前から奥へ揺さぶる。
肩を掴むその手は本当に女性なのだろうかと思ってしまうほどの握力で、顔を顰める。
「熱でもあるの!?」
「ち……違うったら!」
「じゃあ、どうして……あ。服……?」
思わず怒鳴ってしまった私の声にはっとした姉は冷静に部屋の状況を確認して、しばらく難しい顔で考えあぐねていると、「あっ!」と閃く。
「もしかして……デート!? 相手は誰!?」
今度はぐわんぐわんと頭まで伝わる振動で激しく揺さぶってきて、もうどうにもできない。
「あっ! もしかして、山下君!?」
「で、デート……じゃない……っ」
やっと姉の暴走が止まると、お互いの荒い息遣いが室内に満たされる。
「え……? で、でも……相手は山下君……なんでしょ?」
「で、出かける……だけだよ……」
ただただ二人の息切れが聞こえるだけの時間が多く、萌がやっと冷静さを取り戻した頃には正常な呼吸に戻っていた。
「いやいや……デートでしょ、それ」
「違うんだってば!」
「ふーん? じゃあ、そういうことにしとこ〜。──で、いい服がないから、頭がパンクしちゃったわけね!」
「う、うん……そういうこと……かな?」