「こんな展開ですか!?」 - 15

 そして、やっと絞り出せた第一声は「へ……?」と間の抜けたものだった。


「よく判んねぇけど……泣くな」


 真摯な、真っ黒な瞳が私を射抜いた。


 似たようなシチュエーションのときは「うぜぇ」と一蹴されたのに、どうして今日の言葉はこんなに優しいのだろう。


「あ……はい……」

「とりあえず戻るぞ。もうすぐ授業が始まる」


 差し出された手に戸惑いつつも、その上に自分の手を重ねると、引き上げてくれた。
 握った山下君の手は冷たくて、握られた私の右手は驚くほど熱く感じられた。


「ありがとうございます……」


 引っ張られるまま歩いていくと、周囲の生徒がこちらを見つめている。
 明らかに注目の的になっている私たちの存在に、今さらになって手をつないで歩いていることを意識してしまい、恥ずかしくなる。


「あ、あの……。もう大丈夫です……だから、手──」

「黙ってろ」

「は、はい……」


 まともに取り合ってくれず、縮こまって教室に戻ると、クラスメイトが一斉にざわめき出す。


「えっ……山下君、なんで坂下さんと……?」

「なになに!? どういうこと!?」


 それは私の台詞です……──なんて言えるはずもない。


「どういうことって……こういうことだけど?」


 山下君は繋いでいた手を見やすいように掲げてみせた。


 そこからは例のごとく、「えぇえええぇぇ!?」と盛大な驚愕の声だった。


「マジで……?」

「奏、そうだったの!?」

「それなら、そうって言ってよね!」

「う、うん……ごめんね……」


 イケメンの言うことならなんでも信じてしまうのか、それとも、山下君という存在が確かだから、誰も疑わないのだろうか……。


 それからは、あちこちから質問攻めに遭って、ほとほとに疲れた一日だった……。



To be continued...
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