「こんな展開ですか!?」 - 12

「はぁっ……」


 顔をしばらく左右に動かして深く口づけられたあとにキスが終わって、突然に塞がれた口から一気に酸素を吸い込む。


「山下、くん……」


 しかし、山下君は再び口唇を押し当ててくる。
 キスは二度する──確かにスマホ小説でそんなことが書かれていた気がするけれど、本当にそうだと知らずに安心しきっていた自分に後悔する。


「んっ」


 嘘っ……ここまでするの……!?


 大勢の女子がいるというのに、山下君が舌を差し入れてきた。
 あくまで真実味を帯びさせるためなら、ただのキスだけでも事足りるはず──なのに……。


「んはぁ……っ、んっ、ぅんん……っ」


 相変わらず拙い鼻呼吸で応対しつつも、それでも頭の芯が溶かされていくように何も考えられなくなる──。


「ふあぁ……っ」


 最後にはチュッと唇を吸われて、ようやく一連の流れが終わった……。


 その場と言えば、あまりにも静かすぎて、耳の奥でシーン……と音が聞こえる。
 その中で私の息の吸って吐くか細い声だけがやけに響いている気がし、恥ずかしくなる。


 やがて、立っていられなくなった私の体がなんの前触れなく脱力する。
 しかし、すんでで山下君が腰に腕を回してくれ、支える。
 そうして山下君は女子らを見るや否や、我に返ったかのように一斉にビクつく。


「まだいたのか。──さっさと失せろ」

「ひっ──! ご、ごめんなさいっ」


 山下君の気迫に気圧され、バタバタと一目散に逃げ出していった。


「ったく、ウゼェヤツら……。オイ、大丈夫か?」

「は、はい……」

「あっそ。んじゃ」

「きゃっ……!?」腰を支えてくれていた腕に加え、膝裏にも腕を入れてきたと思うと、ふわっと持ち上げられる。


「な、何して……っ、はっ、放してください……!」

「放してもいいけど、力抜けた体じゃどうせ歩けねぇだろうが。それに……この辺、汚ぇし」


 いわゆるお姫様抱っこの形で運ばれ、少し歩いた先にあったベンチに座らされる。


「あ……ありがとうございます……」

「別に」


 スッ……山下君はしばらく私を見つめたあと、何を思ってか、シャツの上から胸の合間をなぞった。
 何の気なしにされたそんな些細なことで、「あ……っ」と声が洩れると同時にピクンッと反応してしまった。
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