「こんな展開ですか!?」 - 09
嫌がらせが始まって一週間が経過した。
最初はそうだと断定できなかった小さなできごとが、やがて弁当やジャージがなくなったり、教科書などが引き裂かれていたりとだんだん表面化しはじめてきた。
「ねえ、やっぱりおかしいって。これって絶対に嫌がらせだって」
「そうだよ……。先生に相談したほうがいいって」
あれやこれやと理由をつけて躱せたその助言も、もはやどう言って回避したらいいか分かり得ないほどに友達も心配している。
「でも……もし言ったら、もっとひどいことになるかもしれないし……。だから、まだ先生に言わないで。お願い」
女の恨みは怖いとよく聞くし、もしかしたら収まってくれるかもしれないと、淡い期待を抱いてしまうそんな甘い自分がいた。
「分かった……。でも、もしなんか危害とか加えられたら言ってよね! 一人よりはマシなんだから!」
「うん……。ありがとう」
「奏ちゃんっ!」
「うわっ、出たっ!」
「えぇ?」
もう少しで4時限目が始まろうかと言うとき、扉からひょっこり顔を出したのは芦屋君だった。
「出たとかひどくね? せっかく奏ちゃんに会いに来たんだからさぁ」
私が今、どのような状況に置かれているか知る由もない芦屋君は平然と教室に入ってきた。
「今日はさ、一緒に帰ろうよ。二人っきりで!」
「露骨なアピールだね……」
「残念。今日もうちらと帰るんだから!」
「いつも一緒なんだからいいじゃん〜。ねっ、奏ちゃん?」
「遠慮します……」
「えぇっ!?」芦屋君が衝撃を受けてすぐ、鐘がなったと同時に世界史の渡部先生が入室した。
そして、渡部先生にとって目立った存在に見えるのか、すぐに芦屋君を見つけて指を差す。
「コラ、芦屋ー。授業、始まってんぞー」
「げっ、なべっち! はいはい、戻りますー!」
「一応、沢口先生に言っとくからな〜」
芦屋君は「なべっちの鬼!」と吐き捨てて、消えていった。
「何とでも言え。よーし、今日は小テストやるからなー」
「えー!」
「えー、じゃないー」
はぁ、また目立っちゃったよ……。
なんで、こんなことになっちゃったんだろう……。