「こんな展開ですか!?」 - 08

「自分で捨てたのか?」

「えっ?」

「だから、お前が捨てたのか?」


 山下君の黒い瞳が私を捕らえる。
 悟られてはいけないと本能がそう訴えているのか、思わず顔を逸らした。


「ち、違います……。多分、私がどこかに忘れてったから、勘違いで捨てられちゃったのかと……」


 実際、汚されていたり、ズタズタに裂かれているなどの被害はないよう。
 もし、たとえ本当に嫌がらせだったとしても、証拠にもならない。


「そっか。気をつけろよ」

「はい……ありがとうございます……」


 袋に再び戻した山下君は特に怪しむこともなく、私に渡してくれ、そのまま帰って行ったのだった。


 山下君って……結構、優しいんだな……。


 いつ頃なくなっていのかは定かではないが、考えるに人が多い昼休みや放課後は狙われにくい──と推測するなら、午後の授業に誰かがごみ箱に捨てた……といったところか。


「はぁ……厄介なことになってきちゃったな……」


 途方に暮れながら昇降口に戻ってきて、革靴に変えられるかどうか、半ば諦めながら袋から出してみると、思いのほか綺麗なままであった。


「あれ? でも……これ、買ったばかりでもないのに……」


 ひと月ほど前に買ったはずで、多少は汚れていたはずなのに、むしろ綺麗になっているなんて……。
 まさか、山下君が磨いてくれたとか……?


「あはは……そんなわけないよね……」


 さすがにそれはないだろう……。


 何はともあれ、待ち合わせのカフェへ急いで向かった。


「──お待たせ!」

「あっ、奏! 待ってたよー!」


 歩いて十数分、なんとかあまり待たせることなく、落ち合うことができた。


「結構、早かったね!」

「うん、なんとか……」

「うちらもあんま待ってなかったしー。じゃあ、頼もっか!」

「うん」


 それぞれパフェやらショートケーキやらを頼み、いつものように他愛ない会話を楽しんだのだった。