「よろしくね」 - 13

「待って!」

「え……」


 廊下に一歩踏み出そうとしたその瞬間、ローターの振動が止まると同時に突然、腕を引かれて空き教室に戻される。


「なっ、なんですか……!」


 振り向くと、そこにはバツの悪そうな顔をする芦屋君が佇んでいた。


「ごめん……」

「え……?」

「さっきの……傷つけたよな……」

「え……? どういう……」

「いや……だから……。確かにさ、俺、最低なことしたと思ってる……。だから、やめたんだよ。そういうこと。今は奏ちゃんだけ」

「え……? あの……それって、どういう意味ですか?」

「え? ──鈍いなぁ……。だから、奏ちゃんのこと、好きだって言ってんだけど」

「え……えええぇぇええ!?」

「うっわ……すごい声……。俺のが恥ずいはずなのに、何か変なの……」

「だ、だだ……だって! 私、告白なんて一度も……!」

「ははっ、そこ? 奏ちゃんの答え次第で俺、奏ちゃんの彼氏になるんだけど」

「か……彼氏!? ですか!?」


 う、うそでしょ……展開が早すぎるよぉ〜!


 芦屋君とはまだ出逢ったばかりだし、よく知らないし……好きかどうかなんて、分かるはずがない!


「ご、ごめんなさい!」

「うわっ、早っ! も少し、考えてくれてもよくね!?」

「だって……芦屋君のこと、よく知らないですもん……」

「いやいや……俺だって知らないし。でもさ……初めてなんだよね。何か、ビビッて来た感じ」

「ビビッ……ですか……?」


 どういうことですか、それ……。


 芦屋君のことは本当に知らない……しかし、少なからず、分かり合えない気がしてきた。


「ま……無理強いはしないからさ……。まずは友達からでお願いします」

「え……? あ、はい……よろしくお願いします……?」


 わけも分からないまま、芦屋君と友達でいることになってしまったわけだけれど……果たして、大丈夫なのだろうか──どうしてか感じた、胸の中のこのもやもやが何らかの予感をさせた。



To be continued...
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