「よろしくね」 - 09




 この前はさんざん、エッチなことをされたが、今回はとりあえず平穏にお昼を迎える。


「奏のお弁当ってきれいだし、美味しいよねー!」

「そ、そっかな……」

「いやいや、ホントだって! うちらなんて親の適当な弁当だしー」

「もしかして、奏が作ってるとか?」

「ま、まあ……少しは……」

「えーっ! マジで!?」

「じゃあ、後で料理教えてよー!」

「あー、いいねー! ねっ、いいでしょ!?」

「た、多分、大丈夫だと思う……」

「やったっ!」

「お母さんは明るくて、お姉ちゃんはめっちゃ美人なんでしょ? 会ってみたかったんだよね!」

「あははは……」


 なるべくだったら、会ってほしくないけどね……。


 どうしても比べられてしまいそうで、怖い。
 けれども、いつまでも逃げていては始まらない。
 少しずつでも変わっていきたい……。


「ん?」


 お弁当を食べ終えたそんなタイミングで、ブレザーのポケットの中に入れていたスマホが震えた。
 なんだろうと見てみると、芦屋君からのメッセージで……。


 ──『2階の空き教室に今から来て』。
 と、ともに、下着とオモチャの写真が添付されていた。


 それだけのメッセージだったけれど、場合によっては不測の事態も考えられる……そんな不安に駆られた私は、急いで指名されている場所へ向かった。


「芦屋君!」


 ガラッと勢いよくドアを開けると、真正面に窓のそばにある机に腰かけていた。


「やあ」

「やあ、じゃないです! なんですか、あれ!」

「あれ?」

「しゃ、写真……です」

「ああ……これのこと?」


 芦屋君は手元に置いていたものをそれぞれ片手で持ち上げ、ぶら下げて見せてみた。
 それは紛れもなく、私が昨日履いていた下着とローターだった。


「か、返してください……!」


 芦屋君に接近し、なおも訴えると、ニコッと笑顔で頷いた。


「いいよ」

「じゃ、じゃあ……」


 腕を伸ばしてそれらを受け取ろうとすると、芦屋君の手はすっと離れていき、その代わりに私の手を掴んで引き寄せられてしまう。


「きゃっ! なっ、なにっ……」

「じゃあ、奏ちゃん。もっかい、ヤラせて?」