「よろしくね」 - 08

「いやー。それにしても、おもしろい家族じゃん
?」

「そ、そうですか……?」


 かなり変な家族だと思うんだけど……。


 唸っていると、芦屋君は「はははっ」と笑う。


「結構、いい家族だと思うけど?」

「それ、素直に喜んでいいんですか……?」

「いいっていいって」


 なんて、楽観的な人なんだ……。


「そう言う芦屋君の家族はどんな感じ?」

「俺ん家? まあ、普通じゃん? 適度に笑いがあるとこ」

「すごい適当ですね……。でも、なんとなく想像つきます。じゃなかったら、芦屋君みたいな人、いないし」

「ひでー。奏ちゃん、たまに痛いこと言うなぁ」



 なんて言ったけど、ちょっと楽しい……かも。

 山下君といるときより、落ち着く……。


「望くーん!」

「やべっ! ──じゃ、また!」

「えっ? あっ!」


 芦屋君は背後から声をかけてきた女子の声を聞いて、慌てるように走り去って行った。
 何事かと思えば、芦屋君の後を追いかける数人の女子が風のように消えていった。


 ああ……追われてるのか……。

 なんて、少女マンガみたいなオチなんだろう……。


「奏ー!」

「あっ、おはよ!」

「おはよー!」芦屋君と取り巻きの女子が消えて少ししてから、今度は友達が声をかけてきた。
 なんて、タイミングがいいんだろう。


「なんか、すごい勢いで女子が走ってったけど……?」

「ああ……あれね、多分、芦屋君の取り巻きじゃないかな。芦屋君、逃げるように走ってったし」

「ああ、なるほどねぇ……。イケメンって大変だなぁ。それに比べて、うちの山下はフレンドリーだよねぇ」

「そ、そうだね……」


 確かに対照的だが、山下君の場合は仮面をつけて接しているのだと思うと、ある意味、芦屋君のほうが性格がいいほうかもしれない……。