「よろしくね」 - 03

「──そういえば、山下とどんな関係?」

「え?」


 駅ビルを後にして、何かと延々と語り続けて適当に流していると、突然、山下君のことが出てきたので反応してしまう。


「あ、やっとちゃんと反応してくれた」

「……別に、どんな関係でも……」

「ないんだ? じゃあ、何でアイツ、保健室に辿り着けたんだろうな? それに、何でもないってなら、わざわざ連れてったりしないだろ?」

「そんなこと……知らないです……」

「へえ?」


 どうして、そんなことを尋ねてくるのだろう……。

 もしかして、勘づかれている?


 察しがよさそうなイメージだ……。


 もう少しというところで家が見えてくる。
 早く芦屋君から逃げたいがために、ほっと胸を撫で下ろしたその瞬間、急に腕を引かれたかと思えば脇道に逸れてしまう。


「なっ、なんですか!」

「ん? いや……もう少しだけ、奏ちゃんと話したいなって思って」

「わ、私はないです!」

「へえ? じゃあ、これいらない?」


 カバンから取り出してきたのは、コンビニ袋。
 そして、その中には私の下着とローターだった。


「これ、奏ちゃんの大事なものでしょ」

「かっ、返してっ……!」

「ダーメ」


 手を伸ばしたところで、逆に捕えられてしまい、上に掲げられて壁に押しつけられる。


「山下とどんな関係? 応接室でよろしくやる仲なんだろ?」

「聞いて……」

「うん、まあね。それに……奏ちゃんの秘密ってヤツもね」


「オモチャ大好き、なんだって?」──吐息混じりでそう耳元で囁かれると、かぁあああっと一気に顔が火照った。


「はは、すげー可愛い……」

「──んっ」


 唇を強くあてがわられ、それがすぐに離れたかと思えば再び深く口付けられ……やがて、舌が私の口内を犯した。


 ──クチュ……


「んんっっ……んやぁ……っ」


 ぷはぁっ──やっとのことで酸素を取り込む。


「あ……」

「ん……奏ちゃんのキス顔、すげーエロい……」


 私の口から溢れた唾液が芦屋君の口の端にもついたらしく、舌で舐めとる。
 そんな一連の仕草はさすがはイケメンで、妖艶で絵になる……まさに、少女マンガから飛び出したようなヒーローだ。
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