「ウソでしょ!?」 - 08

 ひどい……ひどいよ……。


 ただただ悔しくて。
 山下君に遊ばれたことに対して。
 そして、遊ばれるままだった自分に対して。


 逃走した先のトイレは残念ながら列ができていて、さらに虚しさが襲ってくる。


 ああ、もう……どうしよう……。


 早くローターも取りたい……。


 ──カチッ


「っ!?」


 えっ、うそ!?


 途方に暮れる隙も与えてくれないか──確か、このローターは10分後に動き出すタイマー機能がついていた……。


 うそでしょ!?

 早くお手洗い行かなきゃ──


「んんっ……!?」


 うそ……しかも、強い……なんて。

 あの鬼畜……!


 耐えきれずに、私は膝から頽れてしまう……。

 誰か、助けて……。


「大丈夫?」

「え……っ?」


 誰かが声をかけてくれ、やっとのことで顔を上げると、目の前には差し出された手、さらに上を見れば、爽やかそうなイケメンが立っていた。


「どこか痛いのか?」

「あ、あの……っ」


 ローター入れられていて、動けない──なんて言えるはずもなく、どう答えたらよいのか分からない。


「とりあえず保健室行こう。背負った方がいい?」

「あ、は……はい……」


 咄嗟に頷いてしまったが、スカートの中が見えたりしないだろうか。
 しかし、話す気力もなく、背負ってもらうことになってしまった。
 その人はスカートを抑えてくれようとお尻に手を伸ばして支える。


 この体勢……ちょっとダメかも……。


 なぜならローターをさらに奥へ入れるような形になってしまい、振動がより感じやすくなる。
 けれども、せっかく運んでくれる人に今さら注文を言うのも忍びない……。


「大丈夫?」

「は、はい……っ」


 お願い、話しかけないで……。


 それでも息だけはどうしても止められずに荒い息を繰り返し、ずれ落ちそうになる私を正位置に戻そうと揺らされるためにか細い声が洩れてしまう。


「は、は……んん……っ」

「何か……息遣い荒いけど、大丈夫?」

「だい、じょーぶ……です……っ」


 怪しまれてる……。

 どうしよう……!


 焦ったところで何かできるはずもないことは理解しているはずなのに、それでもどうにかしたいと気持ちばかりが急いてしまう……。


「ホントに……大丈夫、ですか、ら──あぁっ!?」