「私の秘密」 - 01
外は爽やかに晴れた秋の空。
教室には先生が走らせるチョークの音、生徒がノートに書き込む板書の音。
「──ん、……ん、ふ……っ」
授業の真っ只中、私の中で小刻みに震える。
こんなこと、イケないことだって分かっている。
分かっているのに、止められない──やめられない……。
「じゃあ、ここを……坂下。解いてくれ」
「はい……」
指名を受け、すぐにスイッチを切って、黒板の前に立つと、書かれた問題の空欄を埋める。
「よし、正解だ。戻っていいぞ」
「はい」
そして、何事もなかったように席に戻って、また再開する……。
そんな日常で、非日常的な行為に及ぶ……それはまさに、私にとってそれは何よりも心地いい場所だった。
私、坂下 奏は目立ちたがりではない。
地味で、弱視の私には眼鏡は必需品だ。
そしてもう一つ、私には手放したくても手放せないものがあった。
それは、地味な私にとって、ありえないもの……秘密がある。
──授業が終わり、それとなくトイレに駆け込んで個室に閉じこもると、息を吐く。
そして、誰もいないことを確認すると、ポケットに忍ばせていた──リモコンを取り出して、スイッチをスライドさせる。
「あッ……! ンッ、んん……!」
待ちに待った刺激に、私は咽ぶように声を洩らす。
「あン……っ、アッ──アァん……っっ」
私の秘密──それは、大人の玩具でこっそり楽しむこと……。
恋愛はしたい……けれども恥ずかしいし、こんな自分が叶う恋なんてあるはずがない。
いつも私の姉である萌と比べられ、ますます自分に自信が持てなくなっていった。
そんなときに、私は大人の玩具に出会った。
何気なくネットにある小説を眺めていくうちに、18歳以上限定の小説を見つけ……その存在を知った。
その小説を載せるホームページには、大人の玩具に関するサイトアドレスが載っていたから、興味本位で閲覧してみたのだ。
最初は道具──特に男性器に見立てた物を見たりするのが恥ずかしかったが、その道具を使った感想がどれも魅力的で……思わず、買ってしまったのがきっかけだった。
ドキドキしながら、説明書を読んでから試してみると……すごく気持ちよくて、私はすぐにハマってしまったんだ。
──それ以来というものの、使い道に困っていた今までのお小遣いやお年玉を注ぎ込み、あれやこれやと次々に試していった。
そして、お気に入りとなった玩具をこっそり鞄に忍ばせて、授業中だろうとしたいときにこうして楽しむのが癖になっていた。
何度もやめようとした。
いつかバレてしまうのではとビクビクしていた。
しかし、すっかり虜になってしまった今では、手放せなくなっていたんだ。
ダメだって分かっている……。
でも、やっぱりないと、不安で仕方がないの……。
──ボタボタ、と水を打つ音を聴いた私は、やっとローターのスイッチを切る。
そうして、また教室へ戻る──そんな、非日常でありながら私にとっては日常を繰り返していた。
教室には先生が走らせるチョークの音、生徒がノートに書き込む板書の音。
「──ん、……ん、ふ……っ」
授業の真っ只中、私の中で小刻みに震える。
こんなこと、イケないことだって分かっている。
分かっているのに、止められない──やめられない……。
「じゃあ、ここを……坂下。解いてくれ」
「はい……」
指名を受け、すぐにスイッチを切って、黒板の前に立つと、書かれた問題の空欄を埋める。
「よし、正解だ。戻っていいぞ」
「はい」
そして、何事もなかったように席に戻って、また再開する……。
そんな日常で、非日常的な行為に及ぶ……それはまさに、私にとってそれは何よりも心地いい場所だった。
私、坂下 奏は目立ちたがりではない。
地味で、弱視の私には眼鏡は必需品だ。
そしてもう一つ、私には手放したくても手放せないものがあった。
それは、地味な私にとって、ありえないもの……秘密がある。
──授業が終わり、それとなくトイレに駆け込んで個室に閉じこもると、息を吐く。
そして、誰もいないことを確認すると、ポケットに忍ばせていた──リモコンを取り出して、スイッチをスライドさせる。
「あッ……! ンッ、んん……!」
待ちに待った刺激に、私は咽ぶように声を洩らす。
「あン……っ、アッ──アァん……っっ」
私の秘密──それは、大人の玩具でこっそり楽しむこと……。
恋愛はしたい……けれども恥ずかしいし、こんな自分が叶う恋なんてあるはずがない。
いつも私の姉である萌と比べられ、ますます自分に自信が持てなくなっていった。
そんなときに、私は大人の玩具に出会った。
何気なくネットにある小説を眺めていくうちに、18歳以上限定の小説を見つけ……その存在を知った。
その小説を載せるホームページには、大人の玩具に関するサイトアドレスが載っていたから、興味本位で閲覧してみたのだ。
最初は道具──特に男性器に見立てた物を見たりするのが恥ずかしかったが、その道具を使った感想がどれも魅力的で……思わず、買ってしまったのがきっかけだった。
ドキドキしながら、説明書を読んでから試してみると……すごく気持ちよくて、私はすぐにハマってしまったんだ。
──それ以来というものの、使い道に困っていた今までのお小遣いやお年玉を注ぎ込み、あれやこれやと次々に試していった。
そして、お気に入りとなった玩具をこっそり鞄に忍ばせて、授業中だろうとしたいときにこうして楽しむのが癖になっていた。
何度もやめようとした。
いつかバレてしまうのではとビクビクしていた。
しかし、すっかり虜になってしまった今では、手放せなくなっていたんだ。
ダメだって分かっている……。
でも、やっぱりないと、不安で仕方がないの……。
──ボタボタ、と水を打つ音を聴いた私は、やっとローターのスイッチを切る。
そうして、また教室へ戻る──そんな、非日常でありながら私にとっては日常を繰り返していた。