「ウソでしょ!?」 - 03

 席に着くと、相変わらず隣の席はすごい人だかりだ。
 これも、毎日続くと思うと、しんどそう。


「オーイ、席に着けー! ホームルーム始めるぞー」

「やべっ! 早く座ろ!」


 担任が入ってくると同時に、ガタガタと慌ただしく一斉に着席する音が響き、その後にはシーンという音が聞こえてきそうだ。
 結構、このクラスは騒がしい方だと思う。
 人気者がいるせいなのかもしれないが──。


「坂下」

「は、はい?」


 担任が連絡事項を話している最中、山下君が声を潜めて話しかけてきた。
 山下君が『セフレ』だなんて言うものだから、つい過剰に反応してしまう。
 まさか、こんな時間から誘われるなんてことはないと思いたいけれど。


「今日、現国の教科書忘れたから、貸してくれ」

「え? あ、はい……分かりました」

「サンキュ。『教科書忘れた』なんて口滑らせたモンなら、『貸してあげる!』って嵐だからな……」

「あ、あはは……大変ですね……」


 だったら忘れないようにすればいいのに……なんて、言えるはずもない。


 ホームルームの時間が終わり、そのまま現国の時間に移行した。
 山下君は現国担当でもある担任にきちんと申し出をし、机をくっつけた。
 そんな山下君を女子がただただじっと見つめているその姿は、正直恐怖でしかなかった。

 山下君の隣って、こんな気持ちなんだろうなぁ……。


「すごい視線が痛いんですけど……」

「気にすんな」

「ええ……」


 山下君は慣れっこかもしれないが、こちらはしんどい極まりない。


「どうにかして慣れろ」

「めちゃくちゃ言いますね……」


 誰か、席、替わってください……。


 そんなことも言えるはずもなく、時間は流れていく……。


 授業に集中したいけれど、まとわりついた視線が離れてくれない。
 誰か助けてください……!
- ナノ -