「ウソでしょ!?」 - 02




「おはよう、奏!」

「あ……お、おはよ!」


 翌朝、昇降口で靴を履き替えていると、仲良くなったグループが声をかけてくれた。


「うーん。まだちょっと固いなぁ」

「ご、ごめんなさいっ」

「あはは、いいっていいって。どんどん慣らしてこう!」

「うん!」

「あと、今日こそは歓迎会だからね!」

「うん、今日は大丈夫!」

「言ったねー? 今日はなかなか帰さないんだから!」


「それ、うちらにも迷惑だから。やめて」

「ほんそれ」


 大丈夫だよね、きっと。

 というか、昨日みたいなことが毎日、続いたら、体が持たない……。


 一緒に教室に入ると、再び注目の視線が集まる。


 う……今度は何なの……。


 ビクビクしていると、あちこちから「おはよー」と声をかけられた。
 怯えていたのが馬鹿らしいぐらい、普通に挨拶されてしまい、呆気に取られていると、後ろから「早く入ろうよ」と背中を押してくれる。


 クラスメイトたちから挨拶されたり、優しく背中を押してくれる友人もいなかった今までの生活を考えると、私にはもったいないと感じてしまう。
 でも……こんな生活も、悪くないかな?


「今日のお昼も、いつもの中庭で食べようね!」

「っていうか、あそこでしか食べてないでしょ」

「ほんそれ」

「アンタって、いつも『ほんそれ』しか言わないよね!」

「そうなの?」

「だって、便利じゃんー。あっ、『ほんそれ』ってのは『ホントにそれ』って言う意味ね」

「へー、そうなんだ……」

「あんま、使わない方がいいって! 奏はそのままでいい!」

「え? あ、ありがとう……?」

「なんか告白みたいだねぇ、それ」

「違うから! 友達として言ってんの!」

「ありがとう!」


 まだぎこちないかもしれないけれど、もっとこのクラスに溶け込めたらいいなぁ……。
- ナノ -