「オレの×××」 - 12

「──ん……」

「あら、起きた?」


 心地いい揺れに名残惜しくも目を覚ますと、隣にはハンドルを握る姉の姿があった。


「あれ、お姉ちゃん……?」

「そうよー。おはよう、奏」

「うん……。でも、なんで……?」

「いい子だったわよー、山下君!」

「えっ?」

「山下君が奏を背負って、車に乗せてくれたのー! 顔もイケメンだし、やることもイケメンだわー!」

「山下君が……」

「そっ! 私ってば、てっきり奏の彼氏かなって思っちゃった!」

「ええっ!? なっ、ないない! ないから!」

「そー? でも、普通だったらできないって、あれはー。何? 奏の好きな人?」

「だから、ないってば!」

「そー。ちょっと残念。山下君だったら、お母さんもすぐにオッケー出しちゃうね!」

「だから、違うってばー!」

「だから、急にイメチェンしたんだー。納得!」

「もう、話聞いてよー!」


 いつになく今日のお姉ちゃん、ひた走ってるなー……。


「あ、そうそう。ちょっとスーパー寄るからね。迎えに行くならついでにって頼まれたの」

「う、うん……分かった……」


 ようやく話が一段落したと思ったら、どっと一気に疲労感が襲ってくる。
 そんなに山下君との会話が楽しかったのかな。


「ホント、いい子だったなー。山下君」

「え?」

「山下君みたいな子が彼氏なら、文句も言えないや。あれじゃ」

「お姉ちゃん……」

「山下君だったら、安心して弟にできるわね!」

「そっち!?」


 もしかして、結婚までさせようとしているのか。
 どこまでも飛躍しすぎる姉だ……。


 夕陽色に染まる街を車窓から眺め、疲れたのでスーパーに到着するまで眠ることにした。



To be continued...
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