「オレの×××」 - X2

 坂下の姉貴って、すげぇ美人だなぁ……。

 ま、妹に似てるような雰囲気はあるけど
……。


「お姉さんって、妹さんとはタイプが真逆ですよね」

「そうねぇ。でも、昔は明るくて可愛かったのよ? まっ、今でも可愛いけどね!」

「はは……」


 重度のシスコンだな……そんなことは間違っても言えないが。


「そう言えば。君、奏のクラスメイト?」

「あっ、はい。クラスメイトの山下真宙です」

「そっ。すごいイケメン君が来ちゃったから、ちょっと焦ったわー。おまけに奏を背負ってるわで……」

「あはは……。教室で倒れてて、ちょうどお姉さんからメッセージ来てたので……」

「あら、そうだったのー。私ってば、てっきり奏にとうとう彼氏ができたのかなぁと思っちゃった! まだ、私の奏でいてほしかったんだけど……」


 勝手に飛躍して話、進めないでくれよ……。

 きっとこれが素だ、坂下も苦労すんだろうなぁ……。


 柄にもなく、坂下を労う。


「ところで、山下君はどこに住んでるの?」

「俺は青葉です」

「じゃあ、私たちよりは少し前ね。分かった、とりあえず駅で大丈夫?」

「大丈夫です、駅に自転車置いてるんで」

「了解」


 何とかごまかせたか?
 俺は安堵の一息を吐き、それからは坂下の姉貴にあれやこれやと問い質された。


「はい、到着」

「ありがとうございました」

「いいのよ、別にぃ。これも、奏を運んでくれたお礼よ」

「ありがとうございます」


 シートベルトを外して、ドアを開けようとすると、坂下の姉貴が「待って」と呼び止めた。


「はい?」

「山下君……これからも、奏のことよろしくね?」

「え?」

「だってこの子、初めてこんな風にお洒落したのよ? 何がきっかけなのかは分からないけど……とにかく、奏には昔みたいな明るい奏に戻ってほしいの」

「はあ……」

「迷惑かもしれないけど、気にかけてあげてね」

「判りました」

「ありがとう。──呼び止めて悪かったわね!」

「いえ。本当にありがとうございました」


 笑顔で返してくれた赤い車が走り去っていくのを見届けると、駐輪場に停めてある自転車の元へと向かった。



─真宙side 終─
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