「オレの×××」 - 09




「奏ー! 帰ろう!」


 帰りのホームルームが終わると、お昼を食べたメンバー3人が声をかけてきた。


「うん! でも、その前にお手洗い、いい?」

「分かった、待っとくね!」


 ホームルームが終わろうというときにお手洗いに行きたいと思っていたので、断りを入れてからトイレへ向かった。


 まさか、イメチェン初日から仲良しグループに入れてくれる人たちがいて、ひとまず安心した。
 これからは、あの子たちと仲良くやっていけば、本当にオモチャのことを忘れられる──もしかしたらやめることもできるかもしれない。

 そうなったら……いいな。


「ずいぶんと楽しそうだな」

「え?」


 お手洗いを済ませ、女子トイレから数歩歩けば、男子トイレそばの壁にもたれかかる山下君の姿があった。


「山下……君」

「何、アイツらと帰んの?」

「は、はい……」

「ふーん。じゃあさ、断ってこいよ」

「え? で、でも……」

「いいから、断ってこい」


 それ以上に返す言葉がなく、私は教室に戻るなり、母から連絡があって早く帰ってこいと言われたと嘘を吐いた。


「そっか……。お母さんからじゃあダメだね。明日は大丈夫そ?」

「明日なら……」

「そっか! じゃあ、明日こそ歓迎会するから! 先帰るね!」

「うん……また明日」


 申し訳なさで、私の手は小さく振って見送った。


 もうすぐで夕陽がオレンジ色へ変色させようという教室に、最後まで残っていた私の友達が消えて誰もいなくなった教室に、山下君が入る。


「あの……これでいいんですか?」

「ああ」

「で、でも、なんで止めたんですか?」

「あ? お前、昨日、俺が言ったこと忘れてんの?」

「え?」

「言ったろ? 俺のセフレになれって」

「え……ほ、本気だったんですか?」


 太陽が山下君を照らし、その山下君が昨日と同じに追い込む。


「俺、そーいう冗談言わねぇから」


 そう真剣な表情で私を見つめられ、つい目を伏せる。


「で? 今日はオモチャつけてんの?」

「今日は……つけてないです……」

「ふーん」山下君はその場にある、誰のか分からない席に肩を掴むや否や無理やり座らせた。


「あ、あの……」

「選択肢やるよ。指と舌、どっちがいい?」

「え? 選択肢……?」