「オレの×××」 - 02

「う、うん……」


 もう、こうなったら付き合うしかない。


「ま、素材はいいんだから、しっかりがんばってね! お姉ちゃん、応援するから!」

「う、うん。ありがとう」

「うん! じゃあ、私、このあとデートがあるから、行ってくるね」

「うん、行ってらっしゃい!」

「ありがとー!」


 とびっきりの笑顔を見せ、姉はさっさと着替えるなり、出かけてしまった。


 普段は天真爛漫な姉だが、仕事はバリバリに働く、アパレル関係の広告代理店のOLだ。
 ギャップが激しすぎると私は思うが、よく言えば切り替えができるという意味、正直、女性で一番憧れだったりする……。
 それに比べて、人付き合いは苦手で、地味な私、そんなことがコンプレックスに感じてしまうんだ。


 こんな私が、山下君と一緒にいるところを見られたら大変だ、なんとか凌がなきゃ。


「奏ー、ご飯よー」

「はーいっ」


 リビングから母の声が聞こえ、私はその呼ばれた先へ向かった。


「はい、ご飯」

「ありがとう」


 父は会議で遅れるそうだ。


「それにしても、雰囲気違うわね。どうしたの?」

「え? あ……ちょっと……イメチェンでもしよっかなって」

「奏が? 珍しいわね! いいんじゃない? もっと、好きに自由にやっていいんだから」

「うん、ありがとう」


 私の家族はどこかテンションが高い。


「何? 好きな子でもできたのー?」

「ち、違うったら!」

「ふふ。その調子だと、萌にも言われたわね? あの子は本当に、妹に溺愛してるんだからぁ。もう少し、大人になってほしいものね」

「そうだね」

「小さい頃なんて、奏と結婚したいって言ってたぐらいなのよ! 姉妹じゃ結婚できないって言っても聞かないのよ」

「そ、そうなの? 変わんないんだね」

「奏は昔は明るかったのよ? お姉ちゃんお姉ちゃんっていつもくっついて歩いてて、その間はずーっと笑顔なんだから」

「もう、恥ずかしいよー」


 いつからか、綺麗になっていく姉に置いていかれてしまうと感じ、私は寂しく思ってしまうんだ。
 それが、コンプレックスに変化してしまったのかな……。
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