「俺かよ!?」 - X1

 ─真宙side─



 ──『今、うちには奏一人だからね!』。
 そんなメッセージが突然、送られてきた。
 送り主は奏の姉貴だ。


「ホント、おもしれぇ姉貴だよな……」


 あの家族となら、確かに楽しくやっていけそうだ。


 そうこうしているうちに、奏の家に到着した。
 驚かしてやろうと思い、メッセージも送らずに来たが……多分、いるよな?
 インターホンを押して、しばらく相手の反応を待っていたが、応対する気配がない。
 もう一度、ボタンを押してみるが、何も変化がない。


「いないのか……?」


 サプライズとしては失敗だが、いくら何でも押し入るのもどうだろうかと思い、仕方なしにメッセージを送ってみても、既読すらつかない。

 無視……ってことはねぇよな……。


 念のために、門扉を開けて玄関に手をかけてみた。
 すると、開いた。

 オイオイ、戸締まりもしてねぇのか?


「オーイ、奏ー? いないのか?」


 玄関から声をかけてみるが、やはり応答はない。
 何かがおかしい……直感で思った。


「奏ー? 入るぞ?」


 リビングなど一階を見てみたが、気配はない。


「奏?」


 一階にいないのなら二階だろう……そう思って、階段を登っていくと、バタンッと物が落ちたような音が聞こえた。


「奏!?」


 音の出どころは奏の部屋からだ。
 もしや倒れたのか!? ──慌てて扉を開けると、そこには確かに倒れている奏の姿があった。
 急いで駆け寄り、奏を抱き起こした。


「奏? 奏!? どうした!?」


 息が荒い。
 汗もすごい……。
 風邪──の症状にしては、重篤のものだ。


「待ってろ、すぐに水持ってくるから!」


 とにかく安静にさせなければ──そう思い、そのまま抱き上げてベッドまで運ぶ。
 すると──


「うわっ!?」


 腕の中の奏が突然、暴れだしてバランスを崩し……二人同時にベッドに倒れ込んだ。


「な……何だよ、急に……」


 奏らしくない──その瞬間、奏が俺の上に覆いかぶさってきた。


「お、オイッ!? 何だよ、急に!」


 しかし──奏の目がひどく虚ろで……。


「奏……?」


 何かが違う……。
 その、『何か』に行き当たる前に、奏の顔が近づいてきて……俺の唇を奪ったのだった。
- ナノ -