「俺かよ!?」 - 04




「うーん……ホントにどうしよう……」


 姉は彼氏とデート、母は友達と日帰り旅行、父は接待のために出かけ、一人となった家の自分の部屋で、あの謎のジュースを見つめていた。


「なんなんだろ、これ」


 腫れ物に触るように、かれこれ一週間も放置。
 いつまでも部屋に隠しておいても、誰かに見つかってしまったらどう弁解したらいいのかも判断できない。
 分からないなら捨てればいい……とは思ったけれど、今は好奇心のほうが勝っていて、もったいないと踏みとどまらせている。


「ちょっと……飲んでみようかな……」


 少なからず毒物ではないことは確かなのだから、試してみる価値はある。
 というより、試してみたい……。


 下からコップを持ってきて、その謎のジュースを注いだ。
 用途によると、コップ一杯分でいいとのことで、コップに入った液体を飲むことなく、またにらめっこする。


 色がピンク色ということ以外は、いたって普通のジュースだ。
 匂いはとにかく甘そうで……。


「普通のジュース──だけど……多分、そうじゃないよね……」


 そうだとしたら、ご愛顧キャンペーン期間中に送ってきたりはしないだろう。
 何かがある……ことは分かるが、それ以上は推測の余地も出ない。


 ゴクリ……と唾を飲み込む。
 何が起こるか分からない……不安なはずなのに、逆にそれが楽しみでもある。
 それが、オモチャの醍醐味というもの。


「い、いただきます……」


 意を決して、ピンクのジュースをごくごくと飲み干す……。


 飲み終えてみると、林檎のような爽やかさもあると思うし、桃のような甘いジュースなような気もする。


「おいしい……」


 つまりは、普通においしいフルーツジュースだ。
 あとは、なんの変化もない。


「なんだ……普通のジュースか……」


 緊張して損した……。
 そう思って安心してしまうと、ふと強い眠気に襲われた。


「あれ……急に、どうした……かな……」


 ふわふわと心地いい感じ、奥から熱が送られてきて……。
 ああ……くらくらする……。
- ナノ -